名古屋グランパスが好調だ。6試合で4勝2分けと無敗を維持し、3連勝で右肩上がり。ここからアウェーが2試合続くのだが、前田直輝に恐れるものはなにもない。100パーセントの力をチームに注ぐ決意を語った。

上写真=攻めにも守りにも大きく貢献するのが前田の持ち味(写真◎J.LEAGUE)

「〜と話していた」の大切さ

 絶好調の名古屋グランパスは、第6節まで負けなしの4勝2分けで2位。特にこの3試合はセレッソ大阪に2-0、サガン鳥栖に1-0、大分トリニータに3-0と失点ゼロの3連勝だ。根底にあるのが守備の規律と攻撃のイマジネーションであることは明らかで、前田直輝ももちろんその両方に寄与している。

 攻撃面で言えば、鳥栖戦の決勝ゴールに続き、大分戦では「アシストのアシスト」を記録した。ダメ押しとなる73分の3点目で、ロングパスで抜け出した成瀬竣平からペナルティー・エリアにタイミング良く入ってきて受けると、1人かわし、3人に囲まれながら粘って横パス、これを金崎夢生が落として米本拓司が左足のミドルシュートで突き刺している。

 1点目は左サイドを崩して吉田豊が、2点目はセットプレーで丸山祐市が決めていて、この3点目は裏のスペースを長いパスで攻略したように、攻撃は変幻自在。この日も最前線の金崎に加え、2列目でプレーする前田、阿部浩之、マテウスがポジションを入れ替えながら相手ゴールに迫っていった。

「監督からそこは自由にやっていいと言われていましたし、誰がどこに入っても景色が変わるだけでクオリティーは下がらないので。攻撃が終わったときにどこにいて、守備でどこに戻るかということだけを徹底しようと話していたし、ボールを持っているときは流動的にやろうとマテちゃんや阿部ちゃんと話していた」

「相手が中を締めてくるならサイドで僕とかマテちゃんが1対1で仕掛けたほうが相手は怖いんじゃないかと思うし、広がるなら阿部ちゃんがギャップで受けようと話していた。誰がどこにいるとかボールがどこにあるからどこに走ろうと決めないで、自主性ではないけど自分たちで決めようと話していたんです」

 自由度の高さがうかがい知れるコメントだが、そこに「話していた」という表現が多いのに気づくだろう。感覚だけではなく、ピッチの上でコミュニケーションを欠かさずに仕掛けていることがよく分かる。

 守備への貢献も、もちろん強く意識している。「スイッチの入れどころがFWやサイドハーフだと思っていて、この前は基本的に僕のところからスイッチを入れたいと思いながら試合に入りました。前が頑張れば頑張る分、後ろが楽になると思ってやってるんで」とは、さすが堅守の松本山雅で一時代を築いただけのことはある。

 これだけうまくいっているのだから、前田自身も「試合をやっている方がシンプルな話、楽しいし、勝てているのでなおさら雰囲気はいい」と認めるが、「でも…」と言葉をつなぐ。

「でも、ちょっとでも勘違いしたら足をすくわれる。連勝とか無失点とか、いい話やいい記事ばかりを見ますけど、選手は切り替えて次の一戦に100パーセントで向かわなければいけない。だから、ウハウハハッピーな感じじゃない」

 ウハウハハッピーになるのは、ランキングのトップに立ってシーズンを終える冬でいい。


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