明治安田生命J2リーグは12月5日に最終節を迎えた。アルビレックス新潟では引退を表明した田中達也を、アルベルト監督が先発でキャプテンとして起用、32分に交代するときには両チームの選手らが花道を作って送り出し、田中も涙、涙のラストマッチになった。

上写真=田中達也は32分、両チームの選手が作った花道を、涙を隠さずにゆっくり歩いてピッチに別れを告げた(写真◎J.LEAGUE)

「全力達也」を目に焼き付けて

 粋なはからいを全身で受け止めて、ピッチの上で表現した。田中達也が引退を表明してから、アルベルト監督は田中を先発で、キャプテンとして起用することを明言していた。12月5日のJ2最終節・FC町田ゼルビア戦。先頭に立って仲間を率いて入場し、コイントスをして、最後のキックオフ。

 左ヒザの負傷が直接の決意の理由と明かしたが、引退する選手と思えないほどのびのびとプレーした。「21年間、常に試合では緊張していたので、変わらず今日も緊張して」ラストマッチに挑んだ。

 5分には相手のCKを防いだあとのカウンターで自陣から持ち上がり、周囲が攻め上がる時間を稼ぎながら左のロメロ・フランクに展開した。13分には、新潟がこの2年で手にしたアルベルトスタイルを実践し、コンビネーションで中央突破を図った。福田晃斗からの縦パスを高木善朗がライン間で受けたところで、近づきながらボールを引き出すと、寄せてきたDFの股下を狙って鈴木孝司を走らせる優しいラストパス。

「チームがやろうとしていたところで、ボールを動かすときにしっかり自分が動いて的になったりということを意識したけど、合わないところも出たかなと思っています」

 最後までプロとしての自分に厳しい目を向けた。だが、押し込まれる場面でも守備にも手を抜かずに向かっていく姿を含めて、すべての人が「全力達也」を目に焼き付けたはずだ。

 32分に、そのときがやって来た。

 交代が告げられると、両チームの選手が花道を作る感動的な演出で送り出した。その真ん中を、涙を隠さずにゆっくりと踏みしめるように歩いてタッチラインをまたぎ、この試合の残り時間を、そして新潟の未来を三戸舜介に託してピッチを去った。その先でも両チームの控え選手やスタッフがさらに並んで、偉大な選手の最後を惜しんだ。「正直見えていないです。泣いて目をつぶっちゃって」と照れ笑いだったが、「でも、最高の試合をみなさんが用意してくれて本当に幸せでした」と心からの感謝を口にした。

 2001年に帝京高から浦和レッズに加入してゴールもタイトルも取り、13年からは新潟に活躍の場を移した。

「いろいろな監督に出会えて、浦和のときのようなガンガン仕掛けるプレー以外でも成長できて、求められるいろいろなプレーを覚えることができました。新潟に移籍して9年間、いろいろ歯がゆいときもありましたけど、やらせていただきました」

 39歳まで妥協することなく戦い続けた。「体の限界までやれたのは、一番褒めてあげたい」が自分への贈る言葉だった。

 久々のビッグスワンのピッチに立って、「サッカーって、サッカー選手っていいな、と思いました」とかみ締めた。そのビッグスワンで、あるいは中継映像で最後の勇姿を見守った新潟を応援する人たちは、「おお、達也、オレンジと青の、おお、達也、オレたちの達也」というチャントを、心の中で大声で叫んだはずだ。


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