J1リーグ第13節、柏レイソル対横浜FCはアウェーに乗り込んだ横浜FCが1−0で勝利を飾った。決勝点となるPKを決めたのは小川航基だった。柏の攻撃を牽引するFW細谷真大はノーゴールに終わった。チームの勝敗を左右する存在になりつつある彼らだが、日本代表のFW陣を刺激する存在になることも期待される。

上写真=柏戦でチームを勝利に導くPKを決めた横浜FCのFW小川航基(写真◎J .LEAGUE)

前田、浅野、上田、町野に割って入る存在となれるか

 2024年1月のアジアカップ、そして2026年北中米ワールドカップを目指して新たなスタートを切った日本代表には、チーム作りの中で向上させなければならないポイントがいくつかある。その一つが決定力の向上だ。当然、カギになるのは得点源たるストライカーを誰にするのかということだろう。

 カタール大会では前田大然の1トップをベースに、後半途中から浅野琢磨に代わるという起用が基本で、コスタリカ戦のみ上田綺世がスタメン出場。だが、この時も後半から浅野に代わった。改めていうまでもなく前田と浅野はスピードが持ち味で、ディフェンスライン裏への走り込みでゴールを狙うタイプ。さらに豊富な運動量でディフェンス面での貢献も大きい。特に前田の前線からのプレス、チェイシングは世界でもトップクラスであり、劣勢が予想されるゲームでは大きな効果を発揮した。

 対して上田は前線でボールを収め、空中戦でも強さを発揮するオーソドックスなセンターフォワードタイプ。裏への抜け出しにも強みを持つストライカーとして総合力の高い選手と言える。ワールドカップでは劣勢が予想される試合には使いづらかった面があり、日本が主導権を握れると踏んでいたコスタリカ戦で起用された。しかし初めての舞台、かつコスタリカの守備陣も強く、力を発揮できなかった。前線で収めるタイプでは大迫勇也が長く代表に定着していたのだが、カタールW杯ではメンバー外となっていた。

 リスタートした代表では、スピードを生かすタイプとして前田、浅野、前線で起点となれる上田、さらにカタール大会でメンバー入りした湘南ベルマーレの町野修斗が、3月のキリンチャレンジカップ(1-1ウルグアイ、1-2コロンビア)で引き続き選ばれている。4人とも次のワールドカップを全盛期で迎えられる年齢のため、新チームでもプレーしているが、負傷離脱した前田を除き、ウルグアイ戦、コロンビア戦で3人がプレーしたものの、誰もゴールを挙げることはできなかった。森保監督を満足させたとは言いがたい。

 それぞれが所属チームで成長している部分も見られるため、代表でもこれまで以上の力を発揮する期待は十分あるものの、彼らを突き上げる新戦力も必要となってくるだろう。そんな存在として期待されるのが、前線で構えるタイプの小川航基(横浜FC)、裏へ抜け出すタイプの細谷真大(柏レイソル)である。2人は13日のJ1第13節で対戦した。

画像: 横浜FC戦はノーゴールに終わったが、キレのある動きを見せていた細谷真大(写真◎J .LEAGUE)

横浜FC戦はノーゴールに終わったが、キレのある動きを見せていた細谷真大(写真◎J .LEAGUE)

 試合はホームの柏が終始優勢に進めながら横浜FCが粘り強く守って、後半にPKを得ると、これを小川が決めて1-0で勝利を収めた。劣勢だった横浜FCでは、小川が少ない攻撃機会の中で前線で起点となり、PKもGKの逆を突いて冷静に決めてチームを勝利に導いた。しかし、このPK以外ではシュートに持ち込む場面をほとんど作れなかった。一方、細谷は鋭い動き出しと競り合いの強さを発揮。たびたび横浜FCディフェンスを苦しめていた。ただ、3本のシュートを放ちながらいずれも得点には結びつけることはできなかった。

 小川は今季開幕から6試合で5得点を挙げて好スタートを切ったが、ここ6試合は得点がなく、この日のPKで6試合ぶりにネットを揺らした。試合前の時点でチームは最下位に沈んでおり、チャンスの数も限られてきたが、得点できなかった試合でもシュート技術の高さ、空中戦の強さを示してきた。タイプが近い上田、町野との争いに加わっていく資質は十分にある。大迫も神戸で出色の出来を見せており、その競争はし烈だ。

 細谷もチームが低迷する中で第11節の湘南戦では彼らしい力強い動きから見事な決勝ゴールを決め、第7節の鹿島アントラーズ戦でも1-0の勝利の決勝点を挙げて、ここまでチームが挙げた2勝に大きく貢献している。彼がゴールを決めた4試合は2勝2分けと負けなしで、さらに得点の数を増やしてチームを上昇させたいところだ。世代が限定されるパリ・オリンピックを目指すチームではエースとして期待されているものの、今後A代表へ食い込んでいくには13試合で4得点では物足りない。

 抜け出しを持ち味とするタイプにはスコットランドリーグで得点王が確実な古橋亨梧や大迫とともに神戸で絶好調のパフォーマンスを示している武藤嘉紀もおり、ライバルは多い。

 この日のプレーに限れば、小川も細谷もライバルたちを脅かすほどのインパクトを残せなかった。それでも日本代表の課題である『ストライカー問題』を解消する可能性ある選手が数多く現れていることはポジティブだ。彼らの成長が日本代表のレベルアップ、Jリーグへの興味を高めることは間違いない。さらなる奮起を期待したい。

文◎国吉好弘


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