上写真=前列左から平野SD、三浦監督、徳山社長、後列左から井上潮音、櫻井辰徳、廣永遼太郎、櫻内渚(写真提供◎VISSEL KOBE)
穴は埋まったと感じています(平野SD)
新シーズンの目標は、はっきりしている。昨季、ACLに初出場し、ベスト4まで勝ち進んだが、クラブが掲げてきた「アジアナンバーワン」になることはできなかった。貴重な経験を積んだ一方で、足りない部分があったのも事実だった。それら課題を踏まえた上で、アジアの頂点に立つために歩を進めていくという。昨季はJ1で14位に終わり、結果、2021年はACLに出場できない。したがって今季の目標はまずはリーグ戦で上位に入り、再びACL出場権を手にすることになる。言わばアジアナンバーワンに向けた仕切り直しのシーズンというわけだ。
今オフには西大伍、ダンクレー、小川慶治朗、渡部博文、藤谷壮ら主軸を担ってきた選手と貴重な働きを見せたバックアッパーがチームを去った。代わりに神戸のユニフォームに袖を通すことになったのが、櫻内渚、廣永遼太郎、井上潮音、櫻井辰徳、リンコンの5人。昨季、福岡で昇格に貢献した増山朝陽、横浜FCで戦った小林友希らも復帰したが、はた目には主軸流出の影響は小さくないと映る。
ただ、補強について平野SDは「昨季、何人かの選手が旅立ちましたが、新たに我々と一緒に仕事をしてくれる選手が加入してくれました。穴埋めできたと感じます」と強調。三浦監督も「チームのコンセプトは昨シーズン、3つほどありました。その中で今シーズンは改善するところがあります。コンセプトは4つに増えました。個人戦術も3つから4つに増えました。詳しいことは言えないのですが、今シーズン、ここにいる選手とともに、我々の選手たちには、しっかりとこのコンセプトと個人戦術を理解してもらって、リーグ戦を戦って、もう一度、あの舞台に立てるように、ACLの出場権を獲得したい」と、目標の実現に向けて前向きな言葉を口にした。
また、指揮官は「昨シーズンの課題は明確です。総得点50はリーグ5位。総失点は59でリーグの中で14位。この数字について、今季は総得点を増やしながら、失点を減らしていくという作業を今、キャンプでやっています。この数字が良くなることによって、今シーズンが終わったときにわれわれが目標とする順位にたどり着くと思っています」ともコメント。攻守両面でさらなる向上を図るとした。
今回の新戦力獲得に関して、指揮官と密に話しながら進めたという平野SDは、昨季はコロナ禍で連戦が続き、多くの選手が試合に出ることになった一方で「地力が足りなかった」と反省し、「終盤になかなか得点できなかった」こともリーグ戦で下位に沈む要因になったと分析する。今オフの補強は、この点を改善するために注力したと明かした。
その成功例の一つが、アンダー世代のブラジル代表に名を連ねてきた二十歳のリンコンの獲得ということになる。「16歳から名門フラメンゴでプレーし、今、二十歳。そういう素晴らしい環境の中でプレーしてきた選手で、我々の期待に応えてくれると思っています。ゴール前で違いを見せてくれる存在」と平野SDも大きな期待を寄せる。新規入国制限によって、現時点ではまだ来日の予定は立っていないが、フィジカルコーチからトレーニングメニューを送るなどし、来日後にスムーズに合流できるように準備を進めるという。
なお、今後の見通しについて聞かれた平野SDは現在はコロナ禍にあり、「外国人を獲得するのは難しい。現時点というよりも1年を通して、チームを強くするために補強を続けるというのは変わりませんが、今は補強がしっかりとできている状態です。ただ、色んな状況に対応できるようにしたい」と、今後の新戦力獲得にも含みを持たせた。
ACLで負った右太ももの負傷によりイニエスタは離脱中であり、リンコンも開幕から出場できるかどうか分からない状況。新戦力の起用法も含めて、2年目の指揮を執る三浦監督の手腕が問われる。新体制発表の段階では、詳しく語られなかった1つ増えたコンセプトの共有と個人戦術の理解が深まったとき、神戸はどんな戦いを見せるのか。注目される。