ヴィッセル神戸が悲願のJ1初優勝を決めた。常に上位を争い、1試合を残してタイトルを手中に収めたが、そんなチームをけん引してきたのがFWの大迫勇也だ。ここまで全試合に出場し、22ゴール・7アシスト。名古屋戦でも2アシストを記録。まさに立役者だ。

上写真=勝てば優勝が決まる名古屋戦で2アシストで貢献した大迫勇也(写真◎毛受亮介)

チームの得点のほぼ半数に絡む圧倒的な成績

 前線でスペースに流れて後方からのボールを引き出し、攻撃の起点になったかと思えば相手DFを背負ってボールを収め、味方に良質のパスを送る。大迫勇也は神戸における絶対的な基準点。自然、チームでボールを奪えば、仲間たちは前線でゴールへのルートを切りひらく大迫の姿を探す。勝てば優勝が決まる名古屋戦でも、そんなシーンが何度も見られた。

 果たして大迫は仲間たちを受け止め、しっかり攻撃を機能させた。そして試合開始早々に見事な2アシストを記録する。

 12分、敵陣左サイドで得たスローインの流れからだった。ゴール前の混戦で扇原貴宏、酒井高徳と経由したボールを引き取ると、裏に抜け出た井出遥也にパスを通した。相手守備陣の間を縫うように、完璧なタイミングでボールが送られた。相手守備陣と味方の状況を瞬間的に把握する力と、その状況の中で最適なプレーを選択する能力、さらにそのプレーを実行する高い技術が備わって初めて成立するようなプレーだった。

 直後の14分のアシストもまた、素晴らしかった。左に流れてパスを受けると、相手DFが足を出せず、しかし中央に走り込む武藤嘉紀に寸分違わぬタイミングでボールを供給。ネットを揺らした武藤も「大迫選手のことを信じて、大迫選手のスキルなら絶対に中に入れてくれると思って良いポジションを取っておこうと。あのポジションを取ったら素晴らしいボールが来た。自分は簡単に当てるだけでした」と絶賛するクロスだった。

 この日、大迫自身が得点することはなかった。だが、得点ランキングトップに立つ22ゴールを刻んでおり、この2アシストで今季通算のアシスト数も7に伸びた。チームはここまで59ゴールを生み出しているが、そのほぼ半数に絡んでいる計算になる。

「去年がああいうシーズンだったので、地に足をつけてキャンプから自分と向き合いながらトレーニングできたことが大きい」と大迫は今季の好調の理由を説明する。昨季は筋肉系の負傷を抱え、満足にプレーできなかった。しかし今年はキャンプからしっかり体を作り、ここまで33試合に出場。まさにフル稼働で、先頭に立ってチームを引っ張ってきたと言っていい。

 今シーズンから吉田孝行監督は、チームを大きく変えた。前からボールを奪いにいくスタイルにシフトし、それに伴って起用する選手には『戦えること、走れること』などタフさを求めた。強度の高さを重視する戦い方を実践する中で、イニエスタらが出番を失っていったが、指揮官の考えるコンセプトは常にブレることがなかった。そんな監督の姿勢に応えたいと、大迫は考えてきたという。

「優勝したのはタカさん(吉田監督)のおかげだと思いますよ。難しい決断がたくさんあったと思いますし、本当にサッカーだけを見てブレずに決断してくれたので説得力がある。来年、僕が調子が悪くて外されてもタカさんだったら許せるかなと思えるくらい、やっぱり素直なので、サッカーに対して。リスペクトしています」

 大迫自身、ピッチで走り、戦って、その上でゴールも生み出した。世界を知り、経験も豊富な選手が練習から100パーセントで臨む姿勢は当然、若い選手にたちにも伝わっていた。結果、チームは一つにまとまり、クラブの悲願だったJ1優勝を成し遂げた。

「僕はピッチの中で、全てを出し切ることを、34試合続けてやろうと思っていたので。本当に良いコンディションで良いシーズンを送れたと思いますし、こうやってみんなで喜べることは素晴らしいことだなと改めて感じます。また頑張れる気がします」

 鹿島時代、ルーキーイヤーだった2009年にもJ1のタイトルを獲得しているが、まだ右も左もわからなかった当時よりも主軸を担って優勝を手にした今回の方が「うれしさがある」という。実際、数字の面でも数字以外の部分でも、文句なしの活躍を披露した。

 2023シーズンの大迫勇也は、誰もが認める半端ない存在だった。

取材◎佐藤 景 


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