上写真=決勝点を決めた相馬勇紀を中心に喜びの輪ができる。名古屋がこの1点を守りきった(写真◎J.LEAGUE)
■2020年12月5日 J1リーグ第31節(@三共F柏:観衆4,991人)
柏 0-1 名古屋
得点者:(名)相馬勇紀
「何が何でも勝ち点3を取って帰るぞ」
ホームの柏レイソルが29試合で勝ち点47の暫定8位。アウェーの名古屋グランパスが31試合で勝ち点56の暫定3位。ともに3位以上のAFCチャンピオンズリーグ出場権獲得へ負けられないゲームは、その切迫感がピッチに表現されていった。
柏がオルンガ、クリスティアーノ、江坂任の前線のトライアングルを中心に北爪健吾、瀬川祐輔によるサイドアタックを生かして攻めれば、名古屋グランパスはマテウスとガブリエル・シャビエルの個人技を軸に、阿部浩之、相馬勇紀を絡めてゴールに向かっていく。それぞれが持ち味を出し合いながら攻めて守った緊張感のあるゲームだった。
前半は五分の勝負。柏が10分、15分にオルンガが狙えば、名古屋もマテウスが21分にドリブルシュート、25分にFKでともに得意の無回転シュートでゴールを脅かした。どちらも鋭い攻撃の基盤になったのが組織された守備で、相手のボールを複数人で囲んで絡め取って素早い攻撃につなげていった。30分には名古屋が柏の瀬川から、40分には柏が名古屋の稲垣祥からそれぞれ奪いきって一気に攻撃につなげたシーンは、その成功例になった。
緊迫した展開はしかし、意外な形で動いた。
51分、名古屋が左サイドを吉田豊が破ってセンタリング、逆サイドに流れて稲垣がもう一度中央に送ると、GKキム・スンギュがまさかのキャッチミス、こぼれたボールを相馬が蹴り込んで、名古屋が先制した。
負けられない柏は神谷優太、呉屋大翔、仲間隼斗と攻撃の切り札を次々に切っていって、ゴールへのパワーを強めていく。82分にはFKから山下達也のヘディングシュートがゴールインするが、残念ながらオフサイド。迫力満点の総攻撃は最後の最後まで続いたが、名古屋の決死の守備がわずかに上回り、このまま1-0で名古屋が勝利を収めた。
柏にとっては上位進出が遠のく痛い黒星。ネルシーニョ監督は「正しく走らない分、体力の浪費があった」と落胆した。「正しく走れない、組織的に戦えない場合には、効率のいい守備や生産性の高い攻撃は生まれない。そういった厳しいゲームだった」と悔やんだ。
一方で、おあつらえ向きのウノゼロを完遂した名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督は、もちろん納得の表情。
「今日は自分たちの良さをしっかり出して、相手の良さを消していく戦いでした。いつもよりは低くブロックを構えてプレスをかけて、うまくはまっていました。こちらの後ろにはスペースを作らずに、うちがボールを持ったときには相手を陣地に帰らせる戦いができました」
テーマの設定と選手の表現がかっちりとかみ合った上での勝ち点3は大きい。
「相手に何をやらせてはいけないかをよく分かった上で、相手を消した90分にしよう、何が何でも勝ち点3を取って帰るぞ、という試合でした。どう戦うべきかをしっかりできて、勝ち点3を取れてよかったです」
これで、翌6日に湘南ベルマーレ戦を控えるガンバ大阪にひとまず勝ち点で並び、得失点差で上回って暫定2位に浮上。残り2試合でこのポジションを死守できるか、ますます争いは激化していく。
現地取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE