上写真=次節は古巣広島戦。稲垣祥の胸に期するものがある(写真◎Getty Images)
「いままで通り自分たちに目を向けて」
2017年から3シーズン、サンフレッチェ広島でプレーした稲垣祥にとって、次節は初めての古巣戦だ。広島の地に堂々と凱旋するべく、準備を整える。
「楽しみな気持ちですね。久々に広島のスタジアムでプレーできるので、ワクワクの気持ちがあるのと同時に、このチームの中では誰よりも(広島の)怖さも分かっているので、警戒の気持ちも強いです」
首位を悠々と独走する川崎フロンターレに続き、2位の座を確保すべく集中する名古屋グランパス。ガンバ大阪、セレッソ大阪、鹿島アントラーズあたりと競り合いになりそうだが、消化試合数は大阪の2チームより多いので、なおさら取りこぼしは許されない。そんな緊迫の中での古巣戦。
「皆さんのイメージからすれば(広島は)守備が堅いと思われるかもしれませんが、全員が攻撃のときにポジションを取ることをさぼらないチームです。いい立ち位置に立って3-4-3という布陣で攻撃を構築していく段階の質がとても高いんです。僕たちのプレッシャーは簡単にはめさせてもらえないと思っています」
うかつに飛び込めば、コンビネーションではがされる。だから難しい。
「前から取りにいけるのか、あるいは簡単にいかない場面も出てくると思うので、どのくらいまで下がって守備をするのかも含めて、簡単な試合にならないと思います」
こちらは4-2-3-1、あちらは3-4-3と最初から配置が違う点にも注意が必要だ。
「立ち位置でズレが出るのでうまくはめなければいけないと思います。はめに行くのなら、こちらの立ち位置を崩してマンツーマン気味にするのか、そうでなければブロックを作るのか、というところはしっかりやっていきたいと思います。広島は4バックの相手に対してどういう立ち位置を取ったら相手のプレスをはがせて、どこを見たら自分たちの展開になるかということを分かっている選手が多いので、難しい試合になると思います」
やっかいなのが、キーマンを抑えれば優位になる、という戦い方が通用しないことだ。「特別な選手というよりは、全員がサポートを怠らずに、守備のときにも全員でプレッシャーをかけてきます。誰かを警戒するというより、チーム全員でプレーすることが徹底されているので、やりづらいですね」と警戒を強める。
個人的にはやはり、青山敏弘との対決を待ち望んでいる。昨季のパートナーにして、日本を代表するエレガントなボランチ。
「挙げればきりがないほど、たくさんのことを学んでいます。プレー面ではもちろん、ボールの置きどころや見ている位置、パスの出しどころなど、数多く学びました。同時に、人間としてどうあるべきか、その基本的なところを見ながら勝手に教わっていましたね。僕が影響を多大に受けた選手の一人なので、そういう選手とマッチアップできるのはすごく幸せだと思います」
マッシモ・フィッカデンティ監督の宣言の通りに2位を目指すいま、集中力がなおさら高まる。
「ここからも別に何も変わらないんじゃないですかね。いままで通り自分たちに目を向けて、どうしたらいいか突き詰めていきます。試合数が減るごとに順位に関するプレッシャーを感じることになりますけど、やらなければいけないことに目を向けながらプレーできるかどうかでしょう」
「理想はシンプルに勝利に導けるボランチ」「チームとして結果を残せば僕個人の評価にもつながる」「ここからどういう順位に導けるかも、個人としての評価になっていくと思う」と貪欲だ。11月11日の夜、広島のピッチで稲垣が勇躍する姿を再び見ることができるだろう。身につけているユニフォームが昨季とは違うけれど。