上写真=力強いガッツポーズ。成瀬は清水戦で2ゴールの起点になった(写真◎J.LEAGUE)
ミスしたことで逆にうまく出せた
成瀬竣平がノッてきた。3-1で快勝したJ1第19節の清水エスパルス戦で最初の2ゴールに絡んで、攻撃的右サイドバックの存在感を示した。
まずは開始早々の2分。こちらの攻撃を止めた清水が攻めに転じる瞬間、右から中に鋭くダッシュして相手の短いパスをかっさらい、ワンタッチでマテウスにつなげた。相手のトランジションの瞬間を狙って入れ替わる「トランジション返し」の成功だ。
マテウスが左の阿部浩之に展開する間に、成瀬はそのままゴール前へ。阿部が外を回った吉田豊をダミーに使ってカットインから放ったシュートは、右ポストに当たってゴール右隅へと吸い込まれていった。
「ゴールが近かったので、前にパスを出した時点でマテちゃんがそのまま持っていってシュートかなと思ったんですけど、サイドに出たのでそのまま中に入っていこうかなと。そこで阿部さんが自分に出すかシュートを打ってこぼれるかを狙って入っていったんですけど、結果的にシュートが入ってよかったと思います」
25分の2点目は、右のタッチライン際に開いて右センターバックの中谷進之介からボールを引き出すところがスタート。それを少しトラップミスして体から離してしまったのでラインを割りかけたのだが、何とか触って中の山崎凌吾へと送り届けた。山崎は体勢を崩しながらターンして、逆サイドから斜めに走って裏のスペースを盗んだ前田直輝へ、そこからGKを外して無人のゴールに蹴り込んだ。
「トラップミスしてしまったんですけど、はじめは足元に止めて自分で縦に出ようと思ったんです。(ミスによってパスに切り替えて)自分から奥の選手につけるときは相手は左から寄せてくることが多いので、受け手の右足に強いパスを当てることは、トラップミスしてなくても意識しているところなんですけど、ちょうどミスしたことで逆にうまく出せたかなと思います」
つい苦笑いだったが、結果オーライ。角度がついたパスをきっちりと山崎の右足に届けたことで、山崎自身もターンするイメージ通りにプレーできたと明かしている。
ここでは攻撃センスが結実したが、そうでなくても前へ意識は常に持っている。
「後ろ向きなプレーをするのではなくて、前から判断を持つことが大事だと思っています。サイドバックからスイッチを入れることが攻撃で大切で、縦パスを出したり、前に出してから自分で出ていくところ、それから次の選手がやりやすいプレーを意識してやっていました」
「山崎の右足」へのパスはまさに、その意識が導き出したものだった。
フィッカデンティ監督も成瀬の特徴を「スピード感、すばしっこさがあって、足元にボールを持って何かをするところ、ドリブルをしたりというところ」として、攻撃で力を出せるような起用を考えている。
次節のヴィッセル神戸戦で、対面する相手の左のワイドは酒井高徳。長くドイツで活躍し、日本代表としてワールドカップに出場した歴戦の強者だ。
「オンとオフがない、というか、オフでも休んでいなくて、試合中ずっと頭を動かしているような、頭のいい選手だと思います。自分が出たらの話ではありますが、集中を切らさずに対峙できるかどうかだと思います」
試合に出て、世界を知る男と丁々発止の戦いに挑めるのであれば、自分の現在地をシビアに知ることのできる格好の時間になりそうだ。