上写真=柏戦に向けて全体で練習できたのは3日だけ。それでも指揮官マッシモ・フィッカデンティはいい準備ができたと話した(写真◎J.LEAGUE)
求められるのは困難に崩れない強さ
名古屋グランパスでは宮原和也、渡邉柊斗、チームスタッフ、さらに選手寮のスタッフと、先週末から今週にかけて4人に、新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出た。先週末に開催される予定だったアウェーのサンフレッチェ広島戦はやむを得ず延期となり、クラブ主導で実施した3回のPCR検査の結果が出るまで全体練習も休止せざるを得なかった。
そんな困難な状況の中、昨日ようやく全体練習を再開し、チームはほぼ準備期間のないままに明後日、8月1日の柏レイソル戦に臨む。それでも、マッシモ・フィッカデンティ監督はまったく動じていなかった。
「一番最初に前提として、とにかくそのときにできるベストを尽くそうと。自分たち次第で変えられることは変えてやっていこうと。そうではない部分の影響もどうしても受けるでしょうが、全力でやっていく。今年、勝つためにはチームとしてどんな困難にも崩れないという強さが求められるし、それを見せなければいけないと思います。選手たちは姿勢を見せてくれましたし、全体練習の数は通常よりも少ないですが、それでもいい準備はできた。この状況の中できることに全力で取り組めたので、いいゲームができると思います」
指揮官が見るのは前だけだ。
「コンディション面は関しては何の影響もない。とにかく前を向いて、今から何ができるか。この先どうしていくかしか、取り組みようがないですから。今まで起きたことは、もう起きてしまっていること。この状況の中で私たちはやれることをやってきました。自信を持ってグラウンドに入ろう、と。それだけです」
コロナ禍の中でリーグ戦を戦うとは、そういうこと。なんでも起こり得る状況を受け入れ、できることをしっかりやるだけ。
「そういう状況でも一人ひとりが強くあろうと、選手に話しをしました。もちろん元の日常に戻ることを願っていますが、いつまで続くか分からないですし、そういった恐怖というか、安心できない状態と付き合いながら生活していくしかない。PCR検査を3回受けても、きょう、どこかで感染する恐れがある。われわれは元々、すごく気を付けていた中で、こういうことが起こってしまったわけです。自分の中で少しでも気を付けられる部分があるんだったら、そうやって過ごそうと、選手たちを一緒にそういう確認をしました」
ウィズ・コロナ時代のサッカーはかくあるべし。それが今、自分たちにできることだと、フィッカデンティ監督は腹をくくっていた。次節の対戦相手は柏レイソルは、現在3連勝中。はたしてどんな戦いを見せるのか。
「いつもの通りの準備をした上で、われわれがやるべき試合展開に持っていかなければいけない。向こうのいいところは出させない。こちらが主導権を握る試合をやらなければと思います」
困難の中、次の試合に照準を合わせる指揮官は、その先もしっかり見据えていた。クラブにこんなリクエストをしたと明かす。
「(延期された試合の)日程がはっきりして、連戦、連戦となっていったときに影響を受けるかもしれません。幸い、私たちは今、いい状態で取りくめていますし、結果にもこだわりながらやっている。結果はついてきたものでいいというよりはいい結果を狙いにいく。そんな中でクラブに私の方からリクエストしたのは、もう少し選手層を厚くしていかないと、どこかで息切れしてしまうのではないかということ。新しいメンバーを加えた上で、今年こういうチームが出来上がった。クラブがすごく努力をしてくれました。そこで『まあままいいところまで行ったね』で終わらせてしまうのか、『やるならとことんやろう』という姿勢でやるのか。クラブに、そういった支えもしていただけたらなと思います」
選手層の拡充を望むのは、むろん、タイトル奪取のためだ。コロナの影響があったから、という言い訳はするつもりはない。選手一人ひとりが強くあろうと説く指揮官は、自身もタイトル獲得を目指し、力強く歩を進めていく。