上写真=日本代表として6月のペルー戦に出場し、活躍した鎌田大地(写真◎Getty Images)
扱いづらかったです
当時(2012年度)の東山高校は、22年度の全国高校サッカー選手権大会で全国準優勝したチームよりも強かったと評されるほど、実力者がそろっていた。その中でも、鎌田大地の技術力と判断力は、群を抜いていた。ただし、入学前からわかってはいたが、実際に指導してみると、ほかの選手と同じやり方ではうまくいかないことを痛感させられた。
「扱いづらかったです。手を焼いたと言いますか、時間がかかったと言いますか……。指導者が持っている10個のパターンのうちの1個で指導できる子ではありませんでした。
これがうまくいかないならこれを試そう、この前はうまくいったのにきょうはうまくいかないといったことが結構ありました。チームメイトの前でしかったりとか、試合で使わなかったりとか、試行錯誤の連続でした」(東山高校の福重良一監督)
大地は、プロになるために、レギュラーの座をつかむために、努力を惜しまなかった。中盤での起用が多かったガンバ大阪ジュニアユース時代とは異なり、1年生のときはFWでの出場が多かった。
それまではドリブルを多用せず、味方のゴールをお膳立てするスルーパスが多い選手だったが、新たな武器を獲得するために、仕掛ける回数やゴール前に抜け出す回数を増やそうとしていた。大型FWの岡佳樹からは、相手との競り方を教わっていた。
当時、大地はこんな風に話していた。
「中学時代は、正直、ヘディングするのが怖くて、1回もしませんでした。でも、今は岡君に教わって、相手の背負い方を意識したりとか、相手に先に当たったりするとか、工夫しています」
そうした向上心は、伸びる選手の特長である。
「プロになれる選手の要素として大事なのは、素直でまじめなことと、自分をちゃんと分析して、問題を自分で解決できることだと思います。酒本憲幸(現・セレッソ大阪アンバサダー)は、ドリブルのテクニックをもともと持っていましたが、入学当初は戦術的な部分が足りなくて、常にサイドに張りっぱなしでした。そういう課題を自分で分析して、変えていきました。金明輝(現・FC町田ゼルビアヘッドコーチ)は、ヘディングが強い一方で、あまりうまくない選手でした。でも、自主練を一生懸命やることで改善していきました。
僕に言われなくても努力できる子がプロになっています。そういうところが、大地にもありました。素直で真面目ですし、絶対的な信念を持っていました」(福重)