3月20日の北中米ワールドカップ・アジア最終予選7節で、日本はバーレーンに2-0で勝利を収めて8大会連続8回目のワールドカップ出場を決めた。なかなかゴールが生まれない苦しい展開の中で、66分の先制点は、最終予選初出場となった伊藤洋輝の大胆で繊細なパスから生まれた。

上写真=最終予選初出場の伊藤洋輝。先制点の起点となるパスは見事だった(写真◎Getty Images)

■2025年3月20日 北中米W杯・アジア最終予選7節(観衆58,137人@埼玉ス)
日本 2-0 バーレーン
得点:(日)鎌田大地、久保建英

「2番目」の改善点でゴールへ

 66分、喉から手が出るほどほしかった先制点は、伊藤洋輝が左足で送り出した縦パスがつながって生まれた。

 最初のパスを上田綺世に差し込んだ好判断が効いた。しかし、このパスについて聞かれても、ニコリともしなかった。最初に「そこまでにビルドアップのミスもあったんですけど」と前置きするぐらいだったから、全体としてはよほど納得がいかなかったのだろう。

 とはいえ、そのパスを巡る一連のアクションは大胆で繊細なものだった。

 自陣で持ったときに相手が挟み込むように奪いにきた。だが、落ち着いてフェイクを入れて相手の重心を動かして――本人は「一か八かのところはありましたけどね」と苦笑いだったが――これで自由になった。

 そして、ハーフウェーラインまで降りてきた上田に縦パス。

「うまく持ち出したタイミングで綺世が一歩降りてきてくれたので、うまくしっかり左足につけて、きれいにターンしてくれたので良かったです」

 上田に寄せてきた相手から遠い方の左足に優しく届けた。上田はその左足でボールをずらして反時計回りに回ってターン、右から走り込んできた久保建英に預ける。するとその逆、左から右に走り出してきた鎌田大地に届けると、冷静なフィニッシュでついにゴールを割ったのだった。

 だが、最終予選では先制した5試合のうち、最も遅い時間でのゴールになった。それだけ難しい戦いを強いられていた。

「個人的にそんなにテンパったわけじゃないですけど、落ち着いてボールを回していたわけではないな、という風に思います」

 キックオフからずっと、バーレーンのタイトな守備に困惑させられていた。

「うまく僕と(瀬古)歩夢のところにプレスに出てきていて、(板倉)滉のところもセンターフォワードの選手が狙っていました」

 最終ラインで余裕を持ってボールを足元に置いても、パスを届けたい場所にいる仲間は相手にはっきりとマークされている。パスの出口を巧みに隠すバーレーンの日本対策が効果を発揮していた。

 ハーフタイムを挟んで伊藤が施そうとした改善点は、3つだ。

「出しどころに困ってたんですけど、前半が終わったタイミングでもっとロングボールを増やそう、そこは改善できたら、と思っていました」

「僕自身がフリーでも、周りの選手がマークに付かれていると出しどころを探さなきゃいけない部分があって、そこで自分が持ち出して作るのか、それとも出し入れしながらギャップを作っていくのか」

 ロングボールで裏を狙うか、3バックから持ち運んでプラスワンを作るか、ボールを細かく出し入れしながら相手に穴を開けるか。そして先制ゴールは、この2番目の方法で導いてみせたというわけだ。

 そんな改善ポイントについては「そこはもっとチームとしてやっていければいいかな」とこの先を見据える。チームで、という意味においては、伊藤自身もさらにすり合わせていく必要がある。

 ドイツ随一の名門、バイエルン・ミュンヘンに昨年夏に移籍したが、ケガで出遅れて、日本代表としても空白の期間ができた。これが最終予選で初めての出場だった。それもあってか、世界最速でワールドカップ出場を決めた瞬間は「あんまり実感は湧いていないというか…」と正直に明かした。

「ただ、最後にみんなでお祝いするぐらいから実感も湧いてきたし、改めて公の場で、キャプテンも含めてワールドカップで優勝するという目標を全員が共有できました。ここから(最終予選の)残り3試合、そのあとは親善試合が多くなると思いますけど、チームの積み上げをもっともっとしていければいいと思っています」

 ヨーロッパのナンバーワンを狙う世界屈指の名門クラブで日々鍛え、そのエッセンスを、世界チャンピオンを本気で目指す仲間に囲まれた日本代表に共有する。その循環が効率的に回転していくことで、両方の目標に近づいていくことになるだろう。


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