11月1日にJリーグYBCルヴァンカップ決勝が東京・国立競技場で行われ、サンフレッチェ広島が3-1で柏レイソルを破った。2022年以来、3年ぶり2度目の優勝を果たした要因の一つは、チームの成熟度だろう。現地取材した筆者がポイントを綴る。

上写真=サンフレッチェ広島が3大会ぶり2度目のルヴァンカップ優勝を果たした(写真◎高野徹)

柏も序盤は狙い通りのプレーを見せたが…

 サンフレッチェ広島と柏レイソルが対戦したルヴァンカップ決勝は、前半のうちに3点を奪って大きくリードした広島が、後半柏の追撃を1点に抑えて3-1で勝ち、3年ぶり2回目の優勝を成し遂げた。

 広島の得点は2点が右サイドの中野就斗のロングスローから生まれ、残る1点もペナルティーエリア外のFKを東俊希が直接決め、すべてセットプレーから生まれた。

 試合は柏がボールを支配してパスをつなぎ広島ゴールに迫るが、広島は前からのプレスとマンマークで決定的なピンチにまでは持ち込ませない。双方がそれぞれの持ち味を発揮する見ごたえあるプレーが展開された。

 柏は、ボランチと小泉佳穂を中心に恐れず縦パスを入れ、2シャドー、両ウイングバックがポジションを変えてボールを引き出したが、アタッキングサードでの1対1の勝負では広島3バックの対応が堅実かつハードで阻み、特に柏の1トップ垣田裕暉が前線で起点になるプレーを許さなかった。

柏のリカルド・ロドリゲス監督が試合後「前半から我々の狙い通りのプレーができた」と話したように、チャンスを作り出すまでのプレーは言葉通りスムーズだったが、最後のシュートにつなげるプレーの前で阻まれることが多かった。さらに守備の面では思い通りとはいかなかった。

 結果として違いを生み出したのはセットプレーを含め、確実に得点につなげた広島の試合運びの熟練度、チームの完成度の違いからだった。広島はミヒャエル・スキッベ監督がチームを率いて4年目、3年前にこの大会を制した時からGK大迫敬介、3バックの塩谷司、荒木隼人、佐々木翔のラインは変わっておらず、ベテランが衰えを感じさせないために、安定感、連係の確かさはさらに増したように映る。指揮官が「日本一の守備陣」と胸を張るのも頷けた。

 また柏のディフェンスには高さがなく、フィジカルで上回ることができるのは明らかで準備したセットプレーが生かされたのも、チームとしての熟練度がなせる業だったと言えよう。ロングスローは当然警戒されていたはずだが、1点目はゴール前まで投げ入れてセットプレーのゴールでリーグトップクラスの結果を残す荒木の高さを生かし、3点目はニアに入れて佐々木がバックヘッドでファーへ送り込みジャーメイン良のゴールに繋げた。「1週間空いた練習期間で2日間を費やした」(スキッベ監督)成果だろう。

 柏はロドリゲス監督が語ったように本来目指すサッカーが全体としてはできていた。しかし、決勝戦のように生きるか死ぬかの勝負を決するのが、細部にわたる気配りと集中力、そこを見越した準備にあるとすれば結果は順当、チームとしての成熟度に差があったのではないか。

ロドリゲス監督は柏をわずか1シーズンで見事なパスサッカーのチームに仕立て上げた。ただ、まだ大きな修羅場を潜り抜けていない。この敗戦を糧にJ1制覇へ、自分たちができること、3連勝を目指したい。

文◎国吉好弘


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