ロアッソ熊本で活躍しているFW谷口海斗は、高校時代はBチームだったが、夢をあきらめず大学で成長を遂げ、現在プロとして輝きを放っている。その不屈の道のりに、高校時代の指導者も賛辞を惜しまない。
上写真=鳥取戦で鮮やかな先制点を決めて会心の表情。谷口は開幕から熊本の得点源となっている(写真◎AC KUMAMOTO)
高校時代はボランチでプレー
7月29日のJ3リーグ第7節。ガイナーレ鳥取をホームに迎えたロアッソ熊本の先制ゴールは、開始4分に生まれた。GK内山圭のロングフィードから左サイドをフリーで抜け出したFW谷口海斗が、ワンバウンドしたボールに合わせて右足を振り抜く。エリア外から放たれたシュートはドライブがかかり、鮮やかに相手GKの頭上を破ってネットを揺らした。
これでチーム最多となる5得点目。いわてグルージャ盛岡から完全移籍で加入した今季、開幕から全試合に先発して熊本の攻撃の要となっているが、高校時代はFWではなく、無名の存在だった。
三重県出身で、紀州エスフォルソFCから地元の強豪・四日市中央工高(四中工)に進んだ谷口は、主にボランチでプレーしていたものの、なかなかレギュラー争いに食い込めなかった。谷口が2年生のときに四中工に赴任してコーチとなり、昨年度から監督を務める伊室陽介氏は、当時をこう振り返る。
「よく走るダイナモタイプの選手。伸びしろがあるのは分かっていましたが、体が細く、球際の部分が課題でした」
同期に浅野拓磨(現パルチザン=セルビア)などがいた当時の四中工は、2年生のときに全国高校選手権で準優勝しており、毎年レギュラー争いはし烈。谷口は結局、3年生になってもAチームには食い込めず、最後の高校選手権も登録メンバーに入れなかった。