明治安田生命J2リーグを終えて初めて開催されたのが「J2リーグアウォーズ」。見事に最優秀選手賞に輝いたのは、横浜FCのFW小川航基だった。サッカーマガジンWEBも参加する「DAZN Jリーグ推進委員会」で、得点王とベストイレブンと合わせて個人3冠に輝いたエースにインタビュー。大きな自信がにじみ出る言葉を聞いてみよう。

「過去の栄光は忘れるタイプ」

画像: 小川航基と長谷川竜也のコンビは2022年のJ2で屈指だった(写真◎J.LEAGUE)

小川航基と長谷川竜也のコンビは2022年のJ2で屈指だった(写真◎J.LEAGUE)

――そうして生まれた26ゴールとベストイレブン、そしてなにより最優秀選手賞という実績がもたらすものは大きいですね。

小川 正直なところ、昨年までは本当に苦しい時期が長くて、試合にも出られなかったですし、得点も奪えない、シュートすら打てない状態でした。その中でも、自分に何ができるかを常に考えながら、いつかこういう賞をいただくことになることを想定して、苦しいときにもやるべきことを続けてきたことがつながったと思います。この初めての成功体験は、これから先に取り組んでいく自信になりました。

――苦しいときにも未来の成功を信じる信念、想像力、洞察力が花開いたわけですね。

小川 試合に出られなかったり苦しいときは、どうしても下を向いたりナイーブになりがちです。もちろん、そのときにこんな考えはできないかもしれないけれど、下を向いているだけでは何も得ることができません。失敗談の中からは得るものってあると思うんですよ。負けた試合からだって、何かを得ることができますから。でも、下を向いているだけというのは、本当にプラスの要素がない。奮い立たせて上を向くのは難しいことですけど、光をつかむときまでには影があるんだということを理解して、今回はJ2のMVPという成功をつかめたことは、苦しいときにやってきたことが生きているんだなと思います。

――下を向いているところから前に進む、そのきっかけはありましたか。

小川 きっかけを求めてしまいがちですけど、僕が言えることではないかもしれないけれど、きっかけを探している時点でもうダメだなと思っています。それこそ僕も昔は、きっかけがないと頑張れなかったけれど、プロに入ってからはきっかけとか言っている場合じゃないなと。そうしているうちにどんどん追い抜かれていくわけで、なにかがあってようやく奮い立つようでは置いていかれるだけです。だから、常に頑張らなければいけない、と思っています。

――先ほど名前が出ましたが、中村俊輔選手が引退しました。今年は彼のコーナーキックからヘッドでゴールも決めました(第4節○3-2水戸)が、偉大な選手の最後の年にプレーで大きな貢献をもたらし、過去を未来につなぐ役割を担っていくことは、また特別な感慨があるのではないでしょうか。

小川 そのゴールを決めたときもそうですけど、最終節のロアッソ熊本戦でも近い位置でプレーさせてもらって、シュンさんの最後の1年に関わらせていただいたのはすごく光栄に思いますし、あの背中を無駄にしてはいけない思いが強いです。学ぶものは多かったし、桐光学園高校の先輩でもあるので、勝手に親近感を抱いていて、シュンさんはそうじゃないかもしれないけど(笑)、そういう面も含めて今年はいい1年でした。

――この濃密な1年を踏まえて、自らの、あるいはチームの未来像はどのように見えているでしょうか。

小川 この賞をいただいたのは成功体験としてよかったことで、それは忘れてはいけないし、でも忘れなければいけない部分もあると思います。自信を持ちすぎても、天狗になるという意味とはまた違って……なんと言ったらいいのか、バランスが崩れてしまうし、そういう難しさはあると思います。過去の栄光はすぐに忘れるタイプなんですけど、ただそういう実績を残すことができると証明できたことはよかったです。この各賞は、自分の未来にプラスに働くことしかないですね。

――そして2023年はJ1で戦います。

小川 もっと厳しいシーズンで、タフな戦いが待っています。いままでの戦いはすべて忘れて、いまのままでは飲み込まれてしまうと思うので、来シーズンもしっかりキャンプからチームづくりをして戦えるチームにしたいと思います。

取材・構成◎平澤大輔(編集部)

Profile◎おがわ・こうき/1997年8月8日生まれ、神奈川県横浜市出身。桐光学園時代から名を馳せたストライカーで、年代別代表でも活躍した。2016年にジュビロ磐田でプロ入り、19年にJ2の水戸ホーリーホックに育成型期限付き移籍して、7ゴールと結果を残した。20年に磐田に戻ったあと、今季、故郷のクラブである横浜FCに完全移籍で加わった。2・3月、6月、9・10月と今季は3度のJ2『明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVP』に選ばれる活躍で、チームを2位に導いてJ1昇格の立役者になった。新設されたJ2アウォーズで最優秀選手賞に輝き、得点王、ベストイレブンと個人3冠に。186cm、78㎏。


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