上写真=三戸舜介は2点目を決めてゴール裏へ。2ゴールは鮮やかだった(写真◎小山真司)
■2022年10月23日 J2第42節(デンカS/25,414人)
新潟 2-1 町田
得点者:(新)三戸舜介2
(町)岡野洵
「スピード」と「技術」の2ゴール
「ハットトリックできたと思います」
アルビレックス新潟のアタッカー、三戸舜介は鮮やかな2ゴールで勝利をもぎ取っても、晴れ晴れ、というわけにはいかなかった。
13分、自陣で奪ったボールを伊藤涼太郎に預けてそのままゴールへ一直線にダッシュした。足元に吸いつくように、伊藤からのパスが届く。的確なトラップからしっかりと相手を見て、右足をコンパクトに振り抜いた。瞬発力を得たボールは気持ちよくゴール左に飛び込んだ。
「1点目はよく覚えてないんですけど、カウンターのような感じで前にスペースがあったので、自分のスピードと涼太郎くんのボールの質があったら相手ディフェンダーをかわせると思っていました。そこに、本当にジャストのボールが来たので相手と入れ変わることができて、冷静に決めることができたと思います」
相手のビルドアップを引っかけてマイボールにしてから、一気に相手ゴールに迫るスピード感。まさに「2022年版アルビレックス新潟」の象徴的ゴールである。
「奪ってからのカウンターは一つの武器だったので、チームの色を最終戦で出して、アルビらしい得点を取れたのが良かったと思います」
一度は同点に追いつかれたが、慌てずに攻め続けたことが83分に実った。舞行龍ジェームズが右から縦に差し込み、中間ポジションで受けた三戸が前へとターン、見つけた鈴木孝司をポストに使ってリターンを受けると抜け出して、最後はGKポープ・ウィリアムを十分に引きつけておいてからチップキックでゴール左に流し込んだ。
「2点目も自分が孝司さんにパスを出してからまたスペースがあったので、自分のスピードだったらいけると思って、そこにいいボールが来てうまくトラップも決まって、あとは珍しく落ち着いて決められたと思います」
共通するのは「スピード」と「技術」で、まさに今季、松橋力蔵監督が選手とともに築き上げてきたテーマである。でも、わざわざ「珍しく落ち着いて」と説明するところに、プライドが垣間見える。冷静さを欠いたフィニッシュについてとてつもなく反省しているというわけだ。確かに、「ハットトリックできた」と自分から言う実感を持つぐらいにはたくさんのチャンスがあったし、舞行龍ジェームズも「三戸ちゃんは4点取れた」とさらにその上をいく期待を込めていた。
それでも、うれしさはひとしおだった。2点目を取って一気にゴール裏に走っていって、サポーターと喜びを分かち合った。
「1回はやってみたかったので、勢いでいっちゃいました。気持ちよかったです」
両手の指を3本ずつ立てたパフォーマンスは、背番号33の高木善朗に捧げたもの。
「ヨシくん(高木)がケガをしてから、点を決めたらやると言っていたので、やっと実現できました」
チームを支えてきた高木が9月18日に負傷して、右膝前十字靭帯損傷の重傷だった。だから、その分も自分が、の思いが強かった。
これでシーズン6ゴールとして、キャリアハイ。でも「満足していない。それだけです」とばっさり。
「そんなに手応えは感じられなかったです。J2の舞台ではだんだん慣れたかなとは思いますけど、J1はやってみなければわからないし、だからこそ本当に楽しみな部分ではありますね」
J1という未体験ゾーンへの挑戦に、武者震いだ。
2022年を振り返れば、昨年引退したレジェンドの田中達也さんの背番号14を受け継いだ。U-21代表として活動して、J1やヨーロッパで活躍するチームメートから刺激を受けてきた。肩の負傷もあって、およそ2カ月、試合に出場できなかった。それでも、昇格と優勝がかかる終盤に復帰して、目覚ましい活躍で大黒柱になった。その経験から得た自信を、新しい舞台にぶつけることになる。
そんな未来へ、この優勝という結果はキャリアにおいてどんな意味を持つことになるだろう。
「先はわからないけれど、すごい経験だし、誰もができる経験ではないと思うので、すごくいい勉強になったというか、今後のキャリアに続けていきたいと思います」
J1への準備のイメージはできている。
「体作りというか、もっと強くならないといけないと思っています。外国人選手もいますし、体の使い方ももう少し練習しないといけない」
2023年、三戸舜介のテーマは「強くなる」だ。
取材◎平澤大輔 写真◎小山真司