2022年のアルビレックス新潟には数多くの強みがあるが、その一つが島田譲のマルチロールだ。基本のボランチのほかにゲームメーカーやパサー、そしてJ1昇格を決めた10月8日のベガルタ仙台戦ではポストプレーヤーとして、サイドアタッカーとしてのアクションが鮮烈だった。

上写真=島田譲が相手ゴールに近い場所でプレーしたことで、2つの得点が生まれた(写真◎J.LEAGUE)

■2022年10月8日 J2リーグ第40節(デンカS/32,979人)
新潟 3-0 仙台
得点者:(新)伊藤涼太郎2、アレクサンドレ・ゲデス

「あれもなんとかアシストにしてください」

 島田譲がそのときにそこにいたことが、アルビレックス新潟の強さを象徴している。

 ベガルタ仙台戦の先制ゴールが生まれた64分のシーン。左サイドの相手陣内深くから渡邊泰基が素早くスローイン、伊藤涼太郎がターンして中を向いたその正面に、島田がいた。伊藤のパスを一度止めてから、また戻す。

「相手にスキがあったので、一つ前のポジションに入って、最後に涼太郎ができるだけ右足で打ちやすいように優しいボールを出せました。ああいうところでなかなか質の高いプレーが出せないことを課題としていて、最後にここで出せたのは良かったと思います」

 熟練のポストプレーヤーのような、巧みなポジショニングと優しい落としのパス。それを伊藤がていねいにゴール右へと送り込んだ。

 そうかと思えば、今度はサイドアタッカーのような裏抜けからのチャンスメークだ。77分の2点目は自ら左の三戸舜介の足下に差し込んでから、その外側を回ってダッシュ、三戸が後ろに戻りながらヒールで縦に出したボールを島田がマイナスに折り返した。相手DFの足に当たったボールが跳ね上がって、伊藤が鮮やかな左足ボレーできっちりと蹴り込んだ。パスが一度相手に当たったから、島田のアシストにはならないのだが…。

「あれもなんとかアシストにしてください。みなさんに2アシストと書いてもらえれば! 自分の中では『昇格した試合で2アシスト』と言おうと思います。歴史に残る2アシスト、って」

 笑いながら「懇願」したが、もちろん、ファン・サポーターの記憶には「2アシスト」として残るだろう。ボランチとして激しい守備と全方位に散らすパスを武器として持っていた背番号20が、まるでストライカーのように振る舞うこともできること、チームとしてそれを生かすことこそが、新潟が1年をかけて獲得した大きな大きな強みである。

 この2ゴールが生まれるまでは、攻め続けながらも得点に至らないもどかしさもあった。でも、ピッチの中の感覚はまったく別。

「相手がうちをリスペクトしてブロックを敷いてくる中で試合が進んだので、どうしても攻めあぐねた形にはなりました。でも、やっていて崩せない感覚はありませんでした。後半はより前の意識を全体で強めたり、配置を少し積極的に前方向に動かしたりしながらスキを突いていこうとして、ゴールにつなげられたと思います」

 だから、焦りは一切感じなかったという。

「カウンターでピンチを作られるようなところもありませんでしたし、みんな切り替えが早くて2次攻撃、3次攻撃につなげていけたので、うちのいいときのゲームができていました。だから点が取れなくても焦りはなかったし、交代選手を含めて必ずゴールを取れると思ってプレーしていました」

 繰り返すが、そこから生まれたゴールには、ボランチでありアタッカーでありポストプレーヤーである島田のマルチな能力が生かされていたのだ。

「思ったよりも相手がブロックしっかり作ってきて、留まっていると崩れないと思ったので、自分たちから相手の間から背後にアクションを起こしたり、カウンターで前に出ていったり、というプレーは意識しました。それは今年ずっと意識してきたことで、ここで結果につながったのは良かったですね」

 今度はそれを、J1のチームにぶつける権利を手に入れた。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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