上写真=鈴木雄斗(左)の見事な切り返しから同点ゴールが生まれた(写真◎J.LEAGUE)
■2021年10月17日 明治安田生命J2リーグ第34節(@カンセキ/観衆8,209人)
栃木 1-1 磐田
得点者:(栃)柳育崇
(磐)大井健太郎
「焦らずにやっていけば良い状況を前で作り出せる」
17分にFKから失点。ジュビロ磐田はビハインドからの戦いを強いられた。
「正直、失点したことが(試合を)難しくしたなという感覚はありました。ただそのあとに、相手の出方に対してチームとしてうまく見ながらサッカーはできていました」
栃木SCはセットプレーに強みがあると分かっていながら先制を許した反省はある。しかし、鈴木雄斗と仲間たちは、難しいけれど大丈夫、という心持ちで試合を進めていった。
磐田は3-4-2-1の配置で、栃木は4-4-2のきれいなブロックで対抗してくる。右のワイドの鈴木にとっては、相手のサイドバックとサイドハーフの間にできるギャップをうまく使って駆け引きで優位に立つことが、チャンスメークには欠かせなかった。
「僕のサイドで言うと、相手のサイドハーフが山本義道選手に食いつかせるようなポジショニングを取っていましたけど、そこもコミュニケーションが取れていました。細かくいろんなところで(押し込む要因は)起きていたのかなと思います」
敵将の田坂和昭監督は、サイドではアウトサイドの選手にシャドーとボランチが関わってきて数的優位を作ってきた磐田のメカニズムに苦心したことを明かしたが、鈴木がピッチで覚えた感触も同じもの。
「得点を取る前よりは(栃木がプレスに)来られなくなったというか、けっこう前にボールをつけることができていたので、焦らずにやっていけば良い状況を前で作り出せると思いながらやることはできていました」
それが44分の同点ゴールのシーンに表れた。
左CKの流れから山本康裕がサイドチェンジ、相手のクリアにいち早く反応したのが鈴木だった。相手のスライドが遅れてフリーで前を向くと、寄せてきた乾大知をじっくりと2度の切り返しで縦にかわしてから、ふわりと優しい軌道のクロスを中央へ。このドリブルで稼いだ時間を利用して、中央で駆け引きしてフリーになっていた大井健太郎のヘッドに届けた。
「失点したことでウチも前に出なければいけない状況になったので、勇気を持って前に出すパスは増えたかなとシンプルに思います」
ボールをつなぐのは、前進して相手を破るためにあるが、ビハインドを負ったことでよりゴールへのまっすぐな意欲を込めたパスが増えたという実感だ。
ゴールは結局、この1点に終わって勝ち点2を落とした印象だと振り返ったが、11試合負けなしという事実は勇気に変わるはず。残り8試合で再び右から仕掛けて、昇格を勝ち取ってみせる。