この連載では2020年のJリーグで注目すべきチームやポイント、見所を紹介していく。リーグ再開から1カ月を経過したのを機に、今回からタイトルを『Jを味わう』にリニューアル。連載第8回目はアグレッシブなプレーで勝ち点を稼ぐ栃木SCを取り上げる。一味違う戦いぶりは必見だ。

最大の伸びしろは両翼

画像: ターゲットとなる矢野貴章(写真)を周囲のサポート力がガッチリとかみ合った攻撃は圧巻だ(写真◎J.LEAGUE)

ターゲットとなる矢野貴章(写真)を周囲のサポート力がガッチリとかみ合った攻撃は圧巻だ(写真◎J.LEAGUE)

 プレスをかけてもロングボールであっさりかわされ、次の瞬間には自陣深く攻め込まれているのだから相手はたまったものではない。ポゼッションには目もくれず、走力を使い、苛烈なプレスとロングボールの循環で敵を磔にする異端の戦術はどんなチームにとっても脅威となるはずだ。

 しかも、試合を重ねるにつれて、新たな武器が確立されつつある。群馬戦からダブル・ピボットの一角に収まった西谷の展開力もその一つ。鋭い縦パスや対角パスを繰り出し、中央突破やサイドアタックの質を高めているからだ。

 そして、最大の伸びしろが両翼だろう。クラブの育成組織が送り出した大卒新人の明本と森俊貴だ。どちらも技術は確か。単騎突破もやすやすとやってのける。おまけに攻守を問わず、馬車馬のように走り回るタフガイだから、田坂監督の覚えめでたいわけだ。

 とりわけ、出色のパフォーマンスを演じる明本に至っては、栃木の新たな看板役者へのし上がった感すらある。接触を少しも恐れず、密集をかき分けて突き進む推進力は特筆もの。大宮を破った一戦で値千金のPKを誘った単騎突破はその象徴だろう。いまや堂々たる立ち回りで矢野に勝るとも劣らない攻撃のキーパーソンになっている。

 ロングボールに加えて、地上戦の攻め手も増えつつあるのは好材料だろう。ジェフ千葉戦で矢野の決勝ヘッドを呼び込んだ瀬川和樹の鋭いクロスも岡山戦で2つ目のアシストを記録。西谷の右足と同様、この人の左足はセットプレーからゴールを量産するための大事なツールとなる。

 課題は明白。総得点7はJ2最少だ。最後の質が問われているとは言え、決定力は簡単に改善できるものではない。当面の課題は質より量。つまりは決定機の数を増やすことだろう。上位にひしめく西の強豪との対戦はこれから。田坂栃木にとってスリリングな夏になりそうだ。


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