上写真=同じスタイルの新潟を圧倒するために。井上が躍動する(写真◎Getty Images)
切り替えとカウンター潰し
東京ヴェルディの未来のエース、井上潮音は「強がりでもなんでもなくて」と前置きして、次節のアルビレックス新潟戦に思いを馳せた。
「自分たちのほうがやれると思うし、相手もボールを持ちたいからそこを上回って90分通して圧倒できればいいと思うし、できると思います。それが相手の良さを消すことにもつながるし、楽しみな試合ですね。攻撃に特徴がある分、守備に難しさを抱えているので狙い目かな」
「個人の能力は高いと思います。その良さを出させないために自分たちが90分、主導権を握りながらサッカーをしたいイメージですね」
大きな自信を携えて、7月29日のホームゲームを迎えようとしている。
もちろん、ビッグマウスなわけではない。根拠がある。
「うちは攻撃するための守備というか、攻撃が終わったところの切り替えだったりカウンターの起点を潰すことだったりが、すごくできているんです。そこは自信を持っていいと思います。それを続けることで自分たちの攻撃の時間を長くすることが、失点しないことへの近道です。切り替えのところ、カウンターの起点を潰すところは引き続きやっていきます。相手が攻められないぐらいボールを持って、圧倒できればいいと思います」
再開後はFC町田ゼルビアと栃木SCに1-1、大宮アルディージャに0-1と3戦勝ちなし。そこからヴァンフォーレ甲府に4-2、ジェフユナイテッド千葉に2-1、モンテディオ山形に0-0と、今度は負けなしで調子を上げてきている。もちろん、魅力的な攻撃サッカーを掲げて見る者を楽しませるスタイルが売りなのだが、好調のベースにある「ボールを奪う」ことの価値を井上はよく知っているのだ。
一方で、攻撃は?
実は前節の山形戦でビッグチャンスを逸している。11分、カウンターで藤本寛也から足元に絶妙のパスが送られてきたとき、飛び出してきたGKをかわしてシュート、というイメージはできていたという。そのとおりに、GKを左に抜いて左足でフィニッシュ…したのだが、無情にもボールは左ポストを直撃し、こぼれたボールに詰めた端戸仁のシュートもDFにクリアされてしまった。
「抜くところまではイメージしていたんですけど、足が滑ってしまって…。でも、ゴールが見えていたので自分でも決まったと思ったんですけど、足元すくわれちゃったなという感じです」
気持ちが落ち込みはしたものの、「チームのみんなが冗談っぽくいじってくれた雰囲気作ってくれたのでありがたかったですし、自分も変に引きずることなくやれた」と微笑む。チームの雰囲気が良い証拠だろう。
山形戦のこの逸機はあったものの、全試合で先発してゴールも2つ。「スペースを見つけて走っていく力はここ最近ついてきているかな。チャンスに絡む回数は確実に増えてきていると思います」と好調を実感している。だからこそ、「それを仕留めること、続けていくこと大事ですね」とゴールを狙う貪欲さを失うことはない。
「試合中に変に考えることが少なくなりました。無心でやれているときがいいときです。ポジション取りだったり戦術が自然にできているのが、いまの自分のパフォーマンスにつながっていると思います」
「いまのサッカーを理解することが一番。それを考えてやるのではなくて、自然にできるようになりつつあります。それが大きい」
とても近いスタイルを標榜する新潟だからこそ、同じ土俵で完全に上回る試合をしたい。
井上の自然体がそれを現実のものにするのかもしれない。