連敗のトンネルから大宮アルディージャを太陽の下に戻したのは、地元・埼玉出身の新加入FWだった。松本山雅FCとのJ2第7節で、戸島章が交代直後に決めて1-0の勝利をもたらしたのだ。「英才教育」で成長の一端を示した。

上写真=地元で移籍後初ゴール。戸島は最高の結果に晴れやかな笑顔だ(写真◎J.LEAGUE)

■2020年7月25日 J2リーグ第7節(@NACK:観衆人)
大宮 1-0 松本
得点:(大)戸島 章

「複数得点を取れるように」

 65分に登場した戸島章が、その3分後に移籍後初ゴールだ。しかも、地元・埼玉での一発。しかも、連敗していたチーム救う決勝点。なんともド派手な活躍で、集まったサポーターの視線を一身に集めてみせた。

「ここ数試合、監督から使ってもらっていて、でもFWとして点が取れていなくて2連敗していたので、自分のゴールで連敗を抜け出せてよかったです」

 会見に臨んだその声も弾んでいた。

 ただでさえ貴重なゴールになったわけだが、そのディテールも抜群だった。戸島が1トップに入り、一緒に交代出場した黒川淳史、前半から切れ味のあるドリブルで攻撃のアクセントになっていた奥抜侃志が2シャドーに構える陣形になったのだが、いきなり黒川-奥抜-戸島-奥抜-黒川-戸島とこの3人のパス交換でど真ん中を割って決めてみせたのだ。「練習から2人とはいい距離感でできていたので、練習の成果が出ましたね」と手応えは抜群だった。

 今季、横浜FCから移籍してきて、ここ3試合は先発で起用されてきた。しかし、連敗を喫してこの日はベンチスタート。出番を待つ間は、相手を見極める時間に費やした。

「前半は相手も入りが良くて押し込まれていて、前半の後半はペースはつかめていたので、拮抗した試合でした。その中で一つ背後に抜けるところとか起点を作ることができたらいいと思っていて、そういった形が出せてよかったです」

 ポストプレーの後にするりとラインの裏に潜り込んで奪ったゴール。まさしく会心の一撃だったのだ。

 高木琢也監督はこう評価する。「戸島は練習から常に高いものを求めてきたかいがあったと思います」「ディテールのところで、ポストプレーやランの質は持っているのに、点を取るというところで言うと、自分がこのチームを引っ張っていくという気持ちをFWは持っていないといけなくて、彼の場合はまだ欠けているところがあった。そこをいま話している最中です」

「アジアの大砲」と呼ばれた、かつての日本を代表していたストライカーに、英才教育を受けている真っ最中なのだ。

「まず1点取って勝てたことは良かったけれど、ほかにもチャンスがあったので2点取ることによってチームは救われると思います。複数得点を取れるように頑張っていきたい」

「FWとしては、自分の点で引っ張っていく覚悟を求められています。得点でしかアピールできないですから」

 高木監督の信念は、しっかりと浸透してきているようだ。

取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE


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