実は色々と問題を抱えていた

消極的なプレーには檄を飛ばし、選手がチャレンジの姿勢を示すとブラボーと叫んで称えていた(写真◎佐藤景)
ーー札幌の監督を退任される際、監督業から退く可能性について95パーセントと話していました。名古屋の監督就任は、現場で指揮を執る意欲が再び沸いてきたということでしょうか。
ミシャ 1年前に監督を退任した後、(足と腰に手を当てながら)実は色々と問題を抱えていた。それもあって休むことにもなったのだが、そのおかげで少しパワーを溜めることができた。色々とトライした結果、状態はずいぶんと良くなって、そういうタイミングで名古屋からオファーをもらった。非常に規模の大きいクラブだし、また日本に戻って来れたのは、非常にうれしい。
ーー体の回復とともに意欲も沸いたのですね。名古屋は2010年に優勝していますが、監督自身もJ1優勝は一つの目標なのではないでしょうか。というのも最高勝ち点を得ながらレギュレーション変更で優勝できなかった2016年の悔しさについて、これまで何度も話されてきました。
ミシャ まったく(苦笑)。少し運があれば、またそういう状況も訪れるかもしれないが、それを言うのは早計だ。
ーー哲学を貫くのがミシャ監督だと理解した上で聞きたいのですが、リーグ優勝はミシャさん自身もやり残した宿題と感じているのではないですか。
ミシャ だとすれば、少しの運を手にできるように祈ることにしよう。
ーー以前、ネルシーニョ監督が柏時代に72歳までJリーグで指揮を執っていた話をさせていただいたことがあります。将来について、ネルシーニョさんの年齢を越えるイメージを持っていますか。
ミシャ それは越えろということか? 今は68歳なので、ならあと4年か(笑)。
ーーもちろん長く活躍してほしいと思っています。今年は変則的なシーズンになりますが、ミシャ監督の日本での20年目のシーズンが最高の1年になることを祈っています。
ミシャ アリガトウ。
先見性のあるミシャが強調する大いなる可能性
「自分には真似できない」と否定するが、「サッカーの未来を見られる指導者だった」イビチャ・オシムさんと同様に、ミシャもまた、未来を見通すことのできる指導者だと感じることがこれまでに何度もあった。2008年時点でJリーグにおいて可変式フォーメーションを導入したことも、ポジショナルプレーの日本到来を予感し、強豪チームとの戦力差を埋めるためにいち早くオールコートマンツーマンに着手したことも、ミシャの先見の明がなせる業。
現在、Jリーグのグローバルフットボールアドバイザーの任に就くロジャー・シュミット氏の手腕に早い段階から注目し、札幌時代に監督と社長という立場だった野々村芳和チェアマンに、シュミット評を伝えたことがあるという。野々村チェアマンに確認したところ、シュミット氏が「ミシャが褒めていた指導者」であることを認めていた。
そんな先見性を持つミシャに今季の名古屋の未来像について聞くと、「選手のポテンシャルは素晴らしいものがある」と即答し、チームはまだ初期段階にあるが、ここまでは「順調に進んでいて、チームは大きな可能性を持っている」と強調した。そして、こちらが投げかけた「リーグ制覇=宿題」という問いに対しては、これまでのように「内容を見ないで結果を見る」風潮に釘を刺すことなく、ただニヤリと笑った。
もちろん、信念は変わらず、内容を求めていくことにはなるだろう。ただし、2026年のミシャにはこれまでとは違う何かを見せてくれそうな予感もある。
取材◎佐藤景
