明治安田J1リーグが開幕し、FC東京は2月15日にアウェーで横浜FCに1-0で勝利を果たした。そして、22日にはいよいよホーム開幕となるFC町田ゼルビア戦を迎える。今季最大の話題は松橋力蔵監督の就任。アルビレックス新潟時代にもともに戦った高宇洋に、そのサッカーの魅力をじっくり聞いたロングインタビュー。

時間を止める

――チーム全体のメカニズムという視点から、どんな「逆算」があるでしょう。

 攻守に人の立つ場所が変わってきますし、クロスの対応や前からはめるプレスのかけ方にも違いが出ています。ビルドアップのときにもボランチが立つ場所がこれまでとはまた異なることもありますね。

――なるほど。ビルドアップについては開幕戦のように相手も同じシステムでミラーゲームになると、すべてで1対1の状況が生まれます。

 そこを打開するには、ある程度はズレを作る必要があります。ベースのシステムがあったとしても臨機応変に対応していい、というような提示も監督やスタッフから出ていますし、そのほかにもピッチの中で選手が感じ取ったものをプレーに出しています。

――その開幕戦では、左サイドでウイングバックの長友佑都選手が高い位置を取り、その空いたスペースに高選手がカバーするように入ってボールをピックアップできるポジショニングを見せたのも、そういう理由からなんですね。

 そうですね。あそこで優位性を作りたかった。ピッチが難しかったこともあって、3バックの左のテツ(岡哲平)や中央のモリくん(森重真人)の近くからピックアップして進入していくことを意識していたんです。ただ、そこから縦パスをつけようとしたときに受け手がいなかったのは修正点ですね。

――ピックアップして出口を探る、という一連の作業はボランチの重要な仕事の一つだとされますが、そこで何に意識を向けていますか。

 僕が落ちるときにはウイングバックを上げたり、あるいは3バックの間に入るなら左のセンターバックを押し上げさせたりという流れですね。あとはボールを受けたら単純にバックパスを出すんじゃなくて、前を向けるのであれば向くことは本当に意識しています。それは新潟の頃からですね。

――そこで受け手がいなかったという修正点を解決していくのは、ウイングバックやシャドー、1トップの選手との共同作業になりますね。

 選手のタイプにもよりますけど、あの試合では前半の途中に段差を作ってほしいと伝えていたんです。

――段差とはつまり、最前線のラインにみんなが張り出さずに、誰かが一列下がってくるという意味ですね。

 そうですね。必然か偶然かは分からないけれど、それが得点シーンで出たのは大きい。あのタイミングをずっとうかがっていたんですよ。びっくりするぐらいにきれいな形でしたね。

――右サイド深くのスローインから、白井康介選手が内側へ横パス、小泉慶選手が落として高選手がワンタッチで中央へ、俵積田晃太選手が裏に送り、走り込んでいた白井選手が左足でフィニッシュ、という61分の決勝点でした。小泉選手の落としをもらうときには声をかけていたんですか。

 いや、何も。でも、もう絶対に来ると思っていました。僕もあのスペースを空けておいたので。受けてから、(マルセロ)ヒアンも中にいたので最初はクロスを入れようと思ったんですけど、タワラが段差を作って下がってきているのも見えていました。その次に誰かゴール前に入っていかないかなと思いながら出したんですけど、それは僕の中では慶くんのイメージだったんですよ。そうしたら、康介くんだとは!

――俵積田選手へのあのパス、試合後に自画自賛していましたね! 昔から得意ですもんね。

 あそこはしっかりと狙っていました。アシストの一つ前の「プレアシスト」のような形を開幕戦で出せたのはよかったです。前半から何度も狙っていて、引っかかる部分もありましたけど、そこにいてほしいというメッセージも込めた上でのこと。成功も失敗もあったけれど、それは出す方も受ける方も徐々に感じ取っていければと思っています。

――そういう決定的な一本のほかにも、どんどんボールを出し入れして、それを何度も繰り返すことに意味がありますよね。

 そうなんです。「遊び球」というか、変化をつけながらパスを出し入れしたいですよね。後ろからピックアップすることは比較的フリーでできますから、そこからボランチとシャドーが中央で出し入れして時間を作れたら、もっと全体を押し上げることができると思うので、もっと増やしたいなと。

――それは中央だけではなくサイドでも繰り返すことで、ウイングバックとシャドーとボランチの3人の関係で崩せますよね。

 そうですね。そこは選手の特徴に合わせていきたい。佑都さんだったら、裏に走ったときに僕のパスの質さえ高ければ一発で背後を取れますし。あとはサイドでも出し入れすることで、時間を止められるので、そういうリズムも作りたい。

 タワラとは試合後に話をしたんですけど、点を取りたくてヒアンの近くに、前に入っちゃったと反省していて。彼は本当のスペシャリティを持った選手だから生かしていきたいですし、いっぱいボールを触ってほしいから、どんどん仕掛けろと言っています。基本は外に張っていた選手ですけど、シャドーに入ると360度すべてから相手が来るわけで、ターンしてから仕掛ける動作が増えてきます。そこのスムーズさは彼自身がいろいろ考えながら前向きにチャレンジしていますよ。

2月22日(土)FC東京ホーム開幕戦、FC町田ゼルビア戦の試合情報はこちら


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