上写真=岩尾憲は自身初めてのACLにも、目の前の試合に動じずに向かい続けている(写真◎AFC)
「サッカーで上回れるように」
「このクラブの一員になって、どんな大会でもどの試合でも勝つことの義務というか、勝利への執着というか、そういうものが僕のキャリアの中で最も問われています」
岩尾憲が、浦和レッズの一員としての、そして一人のプロフットボーラーとしてのビッグゲームを迎える。AFCチャンピオンズリーグ東地区準決勝。つまり、東アジアのナンバーワンクラブを決める決戦だ。8月25日19時30分キックオフ、相手は韓国の全北現代である。韓国の大邱FCと日本のヴィッセル神戸を、どちらも延長戦まで戦って破って勝ち上がってきた。
「ACLだから、ということではなくて、目の前の試合で自分がプレーする上で、勝てるのか勝てないのか、その二つに一つが僕自身に問われています。常にトライできる環境が、僕を成長させてくれています」
今季、徳島ヴォルティスから期限付き移籍して、徳島時代からともに戦ってきたリカルド・ロドリゲス監督の下で再びプレーしている。そのキャリアも、中盤のセンターで、つまりピッチのど真ん中でチームを束ねる役回りも、リーダーとしての威風堂々である。
ノックアウトステージに入って、ジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)に5-0、パトゥム・ユナイテッド(タイ)に4-0と連続で大勝した。ただ、国際大会のトーナメント戦だからいつゴールを許してもおかしくなくて、クリーンシートで終えたことは一つの達成だ。
「ボールを動かされても最後のところで守るところと、90分間、相手に握らせないでプレスをしっかり整理していくところのメリハリはできたと思います。相手がやってくることを想定しながら、それとは違うこともあるけれど、チーム全体で対応できているのはすごくいいことです」
準々決勝ではパトゥムが後半から立ち位置に変化を加えてきたが、浦和は動じなかった。もちろん、選手の質に大きな差があったとはいえ、個の力だけに頼らずにチームとして対応できたことに、好ましい実感をかみ締めている。
そしてもちろん、自分自身の変化にも。
「自分が一人の選手として、浦和でどうありたいかが僕の中でばしっと固まったというのが大きな要因としてあります。だからこそ、勝ち続けたい意欲がいま強いんです。それはACLでもJリーグでもルヴァンカップでも同じで、まずは次の試合に勝ちたいし、勝つためにどうするか自分で考えて準備しなければいけないので、そこにウエートを置いています」
背番号19の赤いユニフォームが与えてくれた広くて深いプライド。それがどんなものであるのかは「ここ(ミックスゾーン)では語り尽くせないですね。ごめんなさい」と笑ったが、「ただ、そういう軸があるのは事実です」と表情を引き締めた。
いつか言葉にする前に、まずはピッチの上で表現し続けるつもりだ。準決勝で全北現代がどんな戦いを挑んでくるとしても、自分たちのこれまでを信じて疑わない。
「全北現代のこの2戦の勝ち上がりを見て確実に言えるのは、精神的にタフであるということです。日本のチームを相手に戦うことの意味は、逆もしかりで、お互いに大きな意味を持っています。そのエネルギーはここまでの2戦よりも必ず大きいものになるという言い方ができると思いますけど、とはいえラグビーやアメフトではなくてサッカーをするので、サッカーでしっかり上回れるように、そういう気持ちの面もコンディションの面も含めて準備したいと思います」
取材◎平澤大輔 写真◎AFC