川崎フロンターレでアンカーとして成長を続ける橘田健人。サイドバックでもプレーする多様性も魅力だが、7月20日にフランスの強豪、パリ・サンジェルマン(PSG)と戦ったことで、「運ぶドリブル」を身につける必要性に改めて目覚めた。

上写真=橘田健人はPSG戦で86分までプレー(写真◎福地和男)

「いつも通りの守備でどれだけ通用するか」

 気取らない。気負わない。ただ、全力。橘田健人はパリ・サンジェルマンが誇るきらびやかな世界的名手に対しても、「普通に」プレーすることで距離を測った。

「メッシ、ネイマール、エンバペとはポジション的に対戦することが多いと思ったので楽しみでしたし、多くボールが取れればいいと思っていました」

 その3人が前線でランダムにポジションを変え、センターバックの車屋紳太郎とジェジエウ、アンカーの橘田を中心に対峙する構図。

「特に意識していなくて、普段やっているいつも通りの守備でどれだけ通用するか、普通にプレーしていました」

 そして、その実感は?

「3人だけではなくて、一人ひとりの運ぶ能力が高いと感じました」

 それに対して、自らのプレーに足りないことがあぶり出された。

「チームで前から行けるときにはいい形で奪うことができていましたけど、それを90分、続けられるようにならないと。個人としてもついていけなくなったり出ていけないときがあって、90分間、前から行ける力をつける必要があると思いました」

 守備範囲の広さと豊富な運動量でチームメートから大きな信頼を集める男であっても、持続性が課題になる。

 もちろんこのことは、大きなヒントだ。運ぶプレーができれば、相手の足を止めることができる。わかっていることと実践することの間にある隔たりを埋めていくことが、王者の次のステップだ。

「自分も中盤のポジションで少しでも運んで相手を引きつければいいし、前の選手にフリーでよりいい状況で渡すためにも、運ぶプレーが必要だと感じました」

 でも、運ぶだけでは本当に怖い選手にはなれない。

「やっぱりパスしたあとに前に入っていくスピードは桁違いでした。パスを出されたと思ったら明らかにもう背後に走られていたし、特にメッシ、エンバペはレベルが違うなと感じました」

 彼らがやったことを、橘田がJリーグで見せていかなければならない。

「出して動く、ということは、鬼木監督も言っていること。あの3人はそれを究極に極めた人たちだなと感じたし、自分もそこをもっと意識してやりたい。ただ当てて入るだけではなくて、相手を引き出してから当てて入ってきたので、そのために少しでも運ぶドリブル、相手を引き出すドリブルをしていく必要があると感じました」

 シンプルにボールを前に預けるのも、テンポを生むためには必要なアクション。でも、そればかりでは変化が生まれない。だから、ドリブルで運ぶ。橘田がまた一つ、成長へのきっかけをつかんだようだ。


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