上写真=鬼木達監督が選手に求めるのは「本気」。進化には欠かせない(写真◎スクリーンショット)
「体感して、自分たちも表現したい」
2015年、ドイツのボルシア・ドルトムントに0-6。19年、イングランドのチェルシーに1-0。そして22年、川崎フロンターレはフランスの強豪、パリ・サンジェルマンを迎える。
「ドルトムントと対戦したときは監督ではありませんでしたが、こんなに差があるかと衝撃受けたのをよく覚えています」
鬼木達監督は世界の強豪とのマッチアップに大きな意味を見出している。ピッチの上で「本物」を体感すると、その瞬間から選手たちが大きく変わるのを見てきたからだ。
「本気でやるからこそ得られるものがあります。まず自分たちから思い切ってやることです」
メッシ、ネイマール、エムバペを筆頭に、スーパースターが居並ぶ強豪を前にひるんだら、手にするものはない。
「選手に刺激を受けてほしいと思って組んだ試合ですから、楽しんでもらいたいですね」
選手たちに求めるのは、振り返ってからこの経験を生かす、ことではない。目の前ですべてを吸収して自らのプレーに即座に組み込み、その場で変化をもたらすライブ感だ。それが「楽しむ」の意味。
「試合が終わってから変わるのではなく、試合の中で感じて修正して、より強みとして行動に出していければ面白いと思うんです。試合の中で成長してほしいですね」
ドルトムントやチェルシーとの対戦でも、スピードを感じて対応することで、自然にチームの速さが高まった実感がある。
「自分たちもパススピードを上げようと言っているけれど、スピード感を体験すると違います。最後にゴールのために背後を取りに行く作業もそうだし、ゴールに向かう瞬間や逆に守る瞬間のスピードは圧倒的に違います。それを体感して、自分たちも表現したいですね。小さなスペースでも攻め込んでくると思いますが、それを受けてこれぐらいのスペースであればいけるんだという感覚をつかんでほしい。それを、自分たちも出せればいいと思います」
すべての瞬間で見て、感じて、学び、その場ですぐさま実行する。その繰り返しの90分が、王者の進化につながっていく。