上写真＝セルクルブルージュに移籍することで合意した上田綺世（写真◎KASHIMA ANTLERS）
国内でプレーを続けてもW杯に出られるわけではない
今季、リーグ戦では18試合で10ゴールをスコア。攻撃の中心としてチームをけん引してきたFW、上田綺世が完全移籍で鹿島を離れることになった。行き先はベルギー1部のセルクル・ブルージュ。2018年夏に鹿島の先輩であるDF植田直通が移籍したクラブである。
1日午後にオンラインで取材に応じた上田が今回の決定について、率直な思いを語った。
「年齢的に、もう世界では若くない。挑戦するタイミングを逃してはいけないなというのがやっぱり一番大きなところでした。もう24歳で、自分のなかで焦りがそろそろ出てくる歳になる。海外で最終的にやりたいという思いがあったので、自分のなかでは結構悩みましたけれど、今しかないなっていう決断です」
リーグ制覇を目指し、上位争いを続けるチームをシーズン途中に離れることになるが、悩んだ末に決心した。海外は初挑戦となるが、「最初は慣れも含めて、いま自分がどこまでできるのか、何が足りないのかっていうのをまず見極めなければいけないと思う。自分の武器を最大限に発揮するというか、挑戦して、そのなかでプレースタイルの変化や思考の変化も必要になると思います。そこは臨機応変に、柔軟にできたらいい」と適応すると誓う。
「（海外移籍の考えは)プロになったときからありましたけれど、代表活動とか、自分と違うカテゴリーの選手たちと一緒にやることで、自分のレベルの低さといったら違うんですけれど、やっぱり強度の違いや海外でやっている選手のレベルを感じました。代表の試合とかもそうですが、外国の選手と試合をする中で、向こうの文化も知りたいし、向こうでやってみたいという思いは強くなったんじゃないかなと」
プロになった時からいつかは海外でプレーすることを意識していたという上田は、11月に開催されるワールドカップ前にチームを変えるリスクについて問われると、きっぱりと自身の考えを口にした。
「よく言われるんですけれど、僕はあまりそうは考えていなくて、もともとワールドカップを考えて移籍するわけでもないので。国内でプレーしていてもワールドカップに出られるわけではないですし、キャリアとしては僕は海外に行きたいっていう思いがありました」
自身のキャリアにとって、移籍は「今」だった。
「現状の日本代表を見ても、国内で活躍していても、やっぱり海外で高い強度の中でやっている選手のほうが出場機会はおのずと与えられる。それは自然だと思うし、仮に国内であと10点取って、じゃあシーズン終わって20点で得点王になったとしても、ワールドカップに出られるわけでもない。そもそもワールドカップに出る、出ている選手、これまでもそうだし、これからも日本代表で出る選手は、たぶん海外でも活躍できるクオリティーがある。そうじゃないと、どちらにせよ活躍はできないと思います。（移籍先で）試合に出られなくて、ワールドカップに出られないのであれば、いろんな状況や環境もあると思うんですけれど、たぶん残っても出られないんじゃないかなと僕は思う。ワールドカップに関してマイナスな部分は特にないのでは、と僕は思っています」
移籍して試合に出られないようなら、そこまで選手。どこでプレーしようと代表の水準にあれば、選ばれるとの考えが上田にはある。その自信もあるのだろう。
「この4年間、素晴らしいクラブ、スタッフ、選手、サポーターに囲まれて、僕自身もすごく充実したプロ生活になりました。足を運んでくれるサポーターの方々がいて、伝統を受け継いでいる先輩がいて、やっぱりそういう背中を見てプレーできたからこそ、今の自分がある。それを海外に行って発揮したいという思いもありつつ、新しい文化とかも取り入れながら、また違うプレーヤー、また違う成長ができたらいいと思っています。それを日本から見てほしい。プロなので、タイトルを獲りたいという思いがありましたけれど、やっぱり個人のキャリアを考えると今しかないのも事実で、そこは理解してほしいと思います」
クラブ、チームメイト、そしてサポーターに感謝の思いを述べた上田。7月9日に開催予定のセルクルブルージュのプレシーズンマッチに出場するかはまだ分からないが、2日に日本を立ち、現地入り予定。メディカルチェック後、正式契約を結ぶ。そして就労ビザ取得後、チームに合流。7月24日の開幕戦に照準を合わせ、調整を進めていく。
■上田綺世（うえだ・あやせ）
・生年月日：1998年8月28日
・出身地：茨城県出身
・ポジション：FW
・身長・体重：182cm・76㎏
・経歴：鹿島アントラーズノルテJrユース→鹿島学園高→法政大→鹿島アントラーズ（2019）
