J1はまもなく折り返しを迎える。アルベル監督を迎え、改革に舵を切ったFC東京は、21日に柏レイソル戦を、29日には鹿島アントラーズとホーム、味の素スタジアムで対戦する。前半戦の『ホームラスト2』はチームのここまでの歩みを知り、これからを展望する上で実に興味深い戦いになりそうだ。

上写真=FC東京のアルベル監督。チームの成長に手応えを感じているという(写真◎Getty Images)

Jリーグを熟知している監督との邂逅

 前半戦最後のホーム2試合は、FC東京にとって実に興味深いカードになった。まず、21日に味の素スタジアムに迎える相手は柏レイソル。13節終了時点で順位は7位のFC東京よりも3つ上の4位。チームを率いるのは、あのブラジル人指揮官ネルシーニョである。

 最初にJクラブを指揮したのは1995年。以来、ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)を皮切りに名古屋グランパス、ヴィッセル神戸、そして2009年7月から2014年、2019年から現在まで、柏では2期にわたって通算10シーズン指揮を執っている。

 率いた4クラブで積み上げた勝利数はJ1とJ2を合わせ「254」。その数は外国籍監督としてはリーグ史上ナンバーワンの数字だ。Jリーグを誰よりも深く知り、その勝ち方を知る指揮官と言っていいだろう。

 アルベル監督は今回、Jリーグの発展と日本サッカーの成長に当事者として深く関わってきた指導者と初めて相対することになる。片や通算で10季チームを率いる監督として、こなた今季から就任した1年目の監督として。チームの完成度ではもちろん、相手の方が上だろう。

「海外でも日本でも経験が豊富で、日本で戦うのに有効な経験を重ねている。日本人でも18年、19年指揮を執るのは難しいと思います。その意味では日本人以上に日本人とも言えるのではないでしょうか。ミシャ監督もそうです、16年でしたね。同じリーグで長い期間、指揮を執り続けるというのはやはり、より多くの経験を積んでこのリーグの特徴を熟知しているからでしょう。そういうチームと対戦するのは当然、難しいものです」

 図式として胸を借りる形になるアルベル監督は、リスペクトを込めてネルシーニョ監督の仕事ぶりを称えた。自身はまだまだ日本で指揮を執ることの難しさやJ1で戦うために必要なものに関して日々アップデートしている最中だ。その過程において手練手管の指揮官との邂逅は、大きな意味があるに違いない。そして注目したいのは、両者の志向するサッカーが異なる点だ。

 今年7月に72歳になる柏の指揮官は、ソリッドな守備を基盤に「良い攻撃」につなげることを基本とする。規律を重んじ、ハードワークと素早い切り替えを選手に求め、時に相手の長所を消す策を講じて、システム変更も頻繁に行う。対するアルベル監督はポジショナルプレーを標榜し、ピッチ上で優位性を生み出すために、状況に応じて最適な立ち位置を取り、ボールをつないでゴールを目指していく。誤解を恐れずに言えば、オーソドックスなスタイルをその都度、修正し磨き続けてきた監督と現代サッカーの潮流に乗る監督の対戦である。

「われわれはまだカウンターアタックへの対応に関して、完成度が高くない。そこには改善の余地があります。(相手は)おそらくそこを突いてくるのではないでしょうか。ただ彼らはそれを武器としているので、それに対してどう対応するのか。この試合で成長した部分を見せできればと思っています。順位表においてわれわれよりも上をいく彼らをリスペクトしていますし、されるべきだと思っています」

 アルベル監督の柏評だ。FC東京側からすれば現在リーグ戦は3連敗中であり、是が非でも勝利がほしい一戦ではある。指揮官は、改革初年度に困難が付きものであることを事あるごとに説明しているものの、『連敗』は時に選手に進む方向を迷わせる。その意味でも、ここで勝利をつかみ取りたいはずだ。

 柏の中盤はソリッドで前線の守備もアグレッシブだ。捕獲から得点までの流れを作り出すという点において選手の意思統一もできている。ポゼッション志向を持つ相手に、そんな柏の持ち味が発揮させるケースは多い。予想されるプレスの波をくぐり抜け、前進できるかどうか。的確な場所を見つけて選手がそこに立ち、ボールの出口をつくり出せるか否かがFC東京にとってのポイントだろう。

 言うまでもなく、監督の『Jリーグ歴』がそのまま結果に直結するわけではない。チームの成熟度が必ずしも勝敗を決定づけるわけでもないが、勝てば上位争いを継続できる一戦でもある。FC東京は連敗を止め、力強い前進を再開することができるか(次ページは鹿島戦について)。


This article is a sponsored article by
''.