似て非なる「改革元年」のFC東京と鹿島
前半戦のホーム最終戦となる鹿島戦は、柏戦とはまた別の意味で興味を引く一戦だ。FC東京と同様に鹿島も今季、改革に踏み出したクラブだからだ。チームを率いるのはスイス人のレネ・ヴァイラー監督。ブラジル路線を貫いてきたクラブが初めてヨーロッパ人の指導者を招き入れた。
ただし、改革の中身という点で、両チームは大きく異なるだろう。FC東京はアルベル監督の就任を機にカウンター志向の強いチームから大転換を図っている。基本的にはボールをつなぎ、前進を試みる。縦に速い攻めも選択肢にあるが、そこはケース・バイ・ケースだ。一方で鹿島は監督は変わったものの、「縦に速い」プレーを継承した。変わったのは人とその配置で、昨季まで主にボランチを務めてきた三竿健斗のCBでプレーするケースが増え、ボールを動かせる樋口雄太や荒木遼太郎もボランチに起用するなど、相手やチーム事情があるものの、プレッシャーの中で『受けて展開』できる選手をボールが行き交う要衝に配置する。そこには指揮官の狙いもあり、速さと正確さという点でブラッシュアップが図られた印象を受ける。
いわば『大転換』と『継続する中での進化』の対決である。現時点の結果という点でも、違いが表れるが(FC東京は7位、鹿島は2位)、ただそれがそのまま改革の進ちょくを示しているということではないだろう。アルベル監督は、昨季の順位の違い、すなわちそもそものベースやチームサイクルの問題、クラブの経緯規模などなど、同じ就任1年目の監督と言っても状況とスタートラインが違うと指摘した。
むろん、それは勝利を放棄するということではない。ただ今は内容面の向上や進化を感じられるかどうかも重要ということだ。アルベル監督が進めるのは「常にトップ4に居続けるクラブになるためのプロジェクト」。目先の勝利や短期的な成功ではなく、恒常的に勝てるチームになるために心血を注いでいる。
18日のルヴァンカップ、福岡戦で約1カ月ぶりに実戦復帰した森重真人は、現在のチーム状況について、「ある程度、チームが目指すところ、やろうとしていることはみんな理解できていると思う。あとはアイディアだったり、より相手に守りにくい攻撃を仕掛けたり、単調にならないボールの動かし方はこれから付け加えていくと思う」とコメント。そして「監督は自分らを守るために時間がかかると言ってくれていると思う。でも自分らは、常に結果を求めないといけない。だから負けていいと思っている選手は1人もいない」ともチームとしては勝利を求めていくと語った。
アルベル監督は3年でプロジェクトの成果を示したいという。就任1年目では、求める水準の50%まで持っていきたいとも、かつて話した。改革元年を進むチーム同士の対戦となる鹿島戦で、アルベル・トーキョーはどんな戦いを見せるだろうか。試合は来週の29日。それまでに21日の柏戦、25日の清水戦(アウェー)が控えているが、前半ラストのホームゲームで、ファン・サポーターに後半戦のさらなる進化を期待させる、納得の現在地を見せられるか?