上写真=遠野大弥は清水戦の先制ゴールのきっかけになったパスを送るなど、重要な勝利をもたらした(写真◎J.LEAGUE)
「もう一つの点」で見せる充実ぶり
川崎フロンターレでいま最も勢いがあるのが、遠野大弥ではないだろうか。J1リーグではここまで11試合すべてに出場して、ACLでも6試合中5試合でプレー。主力としての地位を確立しつつある。
そのACLでまさかの敗退を喫しただけに、帰国後最初のゲームとなった清水エスパルス戦はとにかく勝利を強く求めた。
「ACLで負けてしまって、でもそこで培った自信をまずはJリーグで見せつける意味では、いい試合ができたと思っています。勝った上で、まだまだ反省点もたくさん出た試合なので、勝ちながら成長していきたいと思います」
その清水戦は2-0で勝利を収めているが、1点目は遠野のパスから。14分、左サイドで佐々木旭が空中戦に勝ってこぼれ球を拾うと、左から中央のレアンドロ・ダミアンに送って、脇坂泰斗、家長昭博と渡り、最後は角度のないところから脇坂がニアのトップコーナーを撃ち抜く会心のショットを見舞った。その最初のパスに攻撃の意欲が詰まっていた。
「取った瞬間に前を見るようにということはいつも言われてます。旭が球際で頑張ってくれてセカンドボールを拾うことを意識しましたし、練習からやっていることが試合に出て、いい連係ができています」
32分の2点目は、右寄りで持った脇坂がファーのスペースに抜け出したマルシーニョにピタリと合わせるクロスを送って、ヘッドでゴール右に押し込んで生まれた。ここにも遠野は絡んでいる。中央で同じように最終ラインと駆け引きして、脇坂のパスに備えていた。
「僕もフォワードをやっていたので、(いまはインサイドハーフでプレーして)ポジションは違ってもゴールへの意識は強いんです。ダミアンが下りてきて相手を釣ってくれたその背後はすごく意識していましたし、パスが出るにしろ出ないにしろ、ああいう動きは狙っています。マルシーニョが折り返したとしてもゴール前に詰めていたので、そういうところは日頃からやっているプレーが出たと思います」
脇坂とマルシーニョの点と点が結びついたゴールだったが、「もう一つの点」としてしっかり準備できていたことが、目立ちはしないけれど、心身の充実ぶりを物語っている。
「いまはコンスタントに出させてもらっていて、自覚はあります。ピッチには11人しか立てない中できちんと一番に自信を持ってプレーすることを心がけています」
今季はまだゴールがないのが寂しい。「僕が点を取ることよりもチームが勝利を収めることが一番だと思っているので、ほかのことで貢献できればいい」と、「フォワードしては点を取りたいとすごく思っています」の二つの本音を胸に、次節、古巣でもあるアビスパ福岡との一戦に向かっていく。