上写真=開幕戦に向けてトレーニングする稲垣祥(写真提供◎N.G.E.)
わくわくした気持ちが大きい
「今年は監督が代わったので、新たなチャレンジという意味でフレッシュさだったり、わくわくした気持ちが大きいかもしれないですね」
開幕戦を前にした心境を問われ、稲垣は答えた。チームは長谷川健太監督を招へい。成績はもちろん内容も含めて昨年を上回るために新たな一歩を踏み出している。
「よりアグレッシブにというところは攻守ともに健太さんが要求しています。僕ら自身もそれを体現しようと練習しているので、そこは変化があるかなと」
昨季の特長をひと言で言えば、堅守になる。ソリッドな守備がウノゼロ勝利を重ねるベースになっていた。長谷川監督はそのうえで、アグレッシブさを強く求めているという。これまで率いてきたチームでも、攻守両面で「アグレッシブ」な戦い方を披露してきた。稲垣は素早い切り替え、激しい球際、前向きの守備など、積極性を増すであろう新生グランパスで、キャプテンを務める。
「自分はどういう立場であろうと、去年も一昨年も、チームが良くなるための発言をし、行動してきたつもりです」
チームで示す姿勢はこれまで通り変わらないという。ただ、監督とコミュニケーションをとり、選手とのつなぎ役になる仕事は増えるとも自覚する。前任の丸山祐市キャプテンと話し、自分のやるべきことも整理済みだ。「(丸山選手が)常に先頭に立ってリーダーとして引っ張っていくという姿には、みんなが頼もしさを感じていました。練習中も試合中もそういう姿は常にあったので、そういうところは自分自身も参考にさせてもらいながら、学びながらやりたい。ただ自分自身のスタイルや性格を踏まえて、やれることとやれないことは自分が一番わかっている」と語る。
昨季はルヴァンカップ優勝に大きく貢献し、Jリーグでも38試合に出場して8ゴール2アシストを記録。キャリアハイの成績を残し、J1のベストイレブンにも選出された。日本代表にも招集され、2021年は文字通り飛躍の1年になった。自らの活躍によって当然、新シーズンの期待値は上がるはずだが、「個人的な数字は何も意識していないですし、去年は去年で数字は残りましたけど、それを意識して越えてやろうという気持ちはないです」と話し、「チームとしては昨年以上の結果というのはマストだと思う。そこはもちろん意識しながらやっていきます」と、あくまでフォーカスしているのは、個人よりもチームだと強調した。
開幕戦の相手である昨季3位の神戸はリーグ戦でACL出場権争いを演じた相手。名古屋は5位で、あと一歩及ばなかった。現在地を知る格好の相手とも言えるが、チームは新型コロナウイルスの影響で活動が制限されたこともあり、キャンプでは全体練習の数も実戦回数も大幅に減ることになった。スタート時点では万全な状態ではないことは稲垣も認めている。ただ一方で「こうした状況の中でも選手たちは前向きに自主性をもって練習をやっていると感じます」とポジティブな要素を見いだしている。「限られた中でも、健太さんも落とし込むべきところをしっかり落とし込んでくれました。自分たちもフィジカルコンディションを上げながら、チーム戦術もある一定のところまでは持ってこられたと思っています。そういう部分で不安は感じていない」と前を向く。
新監督に率いられた新生グランパスの新キャプテン、稲垣祥。いま持てるものをしっかり出し切って、開幕戦勝利を狙う。