明治安田生命J1リーグで川崎フロンターレが見事に連覇を達成した。チームの成長を振り返る中で、特に後半戦で橘田健人が見せた急成長を抜きには語れない。アンカー、インサイドハーフ、右サイドバックをこなし、優勝を決めた浦和レッズ戦ではトップ下にも入ったマルチローラーだ。人生で初めて優勝を手にした喜びの声。

上写真=チームの成長の象徴的存在になった橘田健人。いまや不可欠の存在だ(写真◎小山真司)

■2021年11月3日 明治安田生命J1リーグ第34節(@等々力/観衆11,603人)
川崎F 1-1 浦和
得点者:(川)ジェジエウ
    (浦)酒井宏樹

「たくさんタイトルを取りたい」

 まさか、なのだった。橘田健人にとっては、J1の優勝を川崎フロンターレの先発メンバーとして味わうことができたのは、まさか、なのだ。

「今シーズンが始まって優勝を目標にしてきて、実際に優勝できたのはとてもうれしかったです。まさか優勝を決める試合でスタメンで出るとは思っていなかったので、よりうれしさはありましたし、もっと活躍して今日のようにたくさんタイトルを取りたいと思います」

 それぐらい、大きな選手になった。

 桐蔭横浜大から加わったルーキーは、年代別代表の経験もなく、全国的には無名の存在。川崎Fの大卒ルーキーといえば、1年先輩で東京オリンピックでもプレーした三笘薫と旗手怜央がいるが「大学のときから一緒にプレーして、明らかにレベルが違ったのであの人たちとは比べてはいませんでした。だから、そんなにプレッシャーはなかった」と笑う。

 それがいまや、日本一のチームに欠かせない選手になった。

 優勝のかかる大一番であっても、リーグ戦の1試合に過ぎず、普段通りにプレーするだけ、と多くの選手が話していて、橘田もその一人だった。だが、実際は心地よい緊張に包まれていたという。

「自分としては普段どおりを意識したんですけど、独特な雰囲気というか、感じたことのない雰囲気で緊張してしまいました。試合が始まればそんなに緊張なくやれていましたけど、もっと質を上げていかないといけないと思いました」

 この試合に関しては反省が次々に出てくる。33分にジェジエウが決めて先制したが、後半は浦和に押し込まれ、最後には89分に同点にされてしまう。

「勝っていたけれどもう1点取りに行こうとオニさん(鬼木達監督)も言っていたんですけど、自然と引き気味にになってプレスがかからず押し込まれました」

「引いて守って奪ったあとのカウンターもできなかったし、ボールを大事にして自分が中心になって動かせればよかったと反省しています」

 アンカーとしてはボールを奪うプレーを得意としているが、苦しいときこそ自分がボールに関与して仲間を助けられるプレーをしなければいけない、という反省は、成長への貪欲だ。86分に投入された山村和也が、大島僚太と中盤の前で並ぶ形になったのと同時に、橘田はトップ下に入って高い位置からプレッシャーをかける新たなタスクも与えられた。優勝するしないに関わらず、さらなるスケールアップへの挑戦は常に始まっているのだ。

「サッカー人生においてこういう優勝はしたことはなかったので、本当にうれしかったですし、こういうチームでサッカーができることが幸せだと感じました」

 そのチームの一員になっただけではなく、ここからは引っ張っていく存在にならなければならない。誰よりも走り、誰よりもバトルして、最後の最後まで全力で戦う。ピッチの上のリーダーとして、素地は備えている。

「守備の予測の部分は評価してもらっていると思います。攻撃しているときにはカウンターのリスク管理を意識して、攻撃に加わるならいい状態の人を使うことを求められています」

 鬼木監督から提示される課題にまっすぐに向き合って、自分のものにしていく実直さこそ、橘田の最大の強みである。

取材◎平澤大輔 写真◎小山真司


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