AFCチャンピオンズリーグのラウンド16で、川崎フロンターレのアジアの冒険は終わった。9月14日、昨季王者の蔚山現代(韓国)に延長戦まで戦って0-0のままPK戦へ、ここで2-3と敗れた。鬼木達監督は悔しさを隠さなかったが、橘田健人の成長などの収穫も得て、J1連覇へと切り替えていく。

上写真=鬼木達監督は悔しさを隠そうとしなかった。オンライン会見の最後にも「皆さん、応援してくださったのに本当にすみませんでした」と頭を下げた(写真◎AFC)

「そういうものも含めて進んでいかなければいけない」

「眠れはしなかったですね。悔しくて」

 アジアを獲る。その最大の目標はついえた。

 鬼木達監督はその夜、悔しさで寝つけなかったという。その影響が続いていたのか、帰国後のオンライン会見に臨むその表情からも疲れがにじむ。

 試合は前半に「思った以上に受けてしまった」と相手のプレーを見すぎた立ち上がり。その反省から後半はキックオフからパワーをかけて奪いに出たことでリズムを奪い返した。鬼木監督の表現を借りれば「空いているところがあってもそれを見せない守備」をしたのだ。状況に応じて4-3-3のアンカーシステムからボランチを2枚にした4-2-3-1のような立ち位置に整理するなど、「守備でも攻撃でも大きく変えるわけではないけれど、少しずつ変えながら」微調整を繰り返して相手を封じ込めながらチャンスを作っていった。

 その意図は、ボールをよりスムーズに動かすための準備にあったという。

「なかなかボールを動かせない中で、アンカーというよりはダブルボランチにして一度安定させてから出ていったことで運動量が必要になりました。それで少し後ろに重くなったかもしれないけれど、実際に立ち位置を取るにはボールを安定させて持たないと前に安心して入れないんです。そこから、ビルドアップをしていく中で各選手が少しずつ頑張る量を減らせられれば前にパワーをかけられるので、途中からはそういう形を取って厚みのある攻撃ができたと思います」

 一度、ボランチを2枚にして安定させたあと、いつものように自分たちでボールを握れるようになると、今度は「頑張る量を減らす」ためにまたアンカーとインサイドハーフの立ち位置に戻すなど細かく変動しながら押し込んでいったという駆け引きだ。

 その中でキーマンになったのは、橘田健人ではないだろうか。スタートはいつものインサイドハーフで、途中からはジョアン・シミッチと並んでダブルボランチになり、終盤にはまたインサイドハーフのタスクを担ってボールの中継点になりながら前線にボールをつけておいて、そのままゴール前にも進出する獅子奮迅の活躍ぶりだった。

「守備でもスイッチになるし、攻撃でも最後のほうはどんどん顔を出してシュートを打った場面もありましたし、ボックス・トゥ・ボックスというか、どちらのゴール前にも行ける選手になってきたなと思っています」

 鬼木監督がそう称えたシュートの場面は、116分のビッグチャンスのこと。長谷川竜也が左から内側の遠野大弥につけ、橘田がやや後ろで受けてから右横の家長昭博に渡すとそのままゴール前に進入していった。ボールは家長から中央の知念慶に渡り、そこに割って入った橘田が至近距離からシュート、しかしゴールを外れてしまった。

 敗退の悔しさの中で、この橘田の成長は大切な光だろう。

「いま一番と言っていいほど急成長している選手です。このまま成長を止めずにより高い目標を持ってやってほしいですし、自分もそこを求めながらやっていきたいと思います。入ったときより自信をつけていっていますね」

 鬼木監督も目を細める成長ぶりだ。

 そんなポジティブな要素を、勝利につなげていかなければならない。最大の目標を失った次の試合が、川崎Fの今後を、つまり今季のJ1の行方を占うことになるだろう。第29節の相手は徳島ヴォルティス。どう戦うべきなのか、その答えは自分たちの中にある。

「ACLとJ1の優勝の2つを同時に達成しようと大きな目標を掲げてきました。その分、大きな失望はあると思います。ただやはり、そういうものも含めて進んでいかなければいけないんです。これまでもそうやって前を向いて進んできたからこそ、この4年間、タイトルを取り続けることができてきているわけです。切り替えて次の相手に対して最善の準備をしなければならないし、選手もその意味を理解してくれています。そうやってずっと戦ってきたので、その思いをぶつけられると思っています」


This article is a sponsored article by
''.