上写真=稲垣祥は3週間ほどのタイでの生活から日本に戻って、ホッとしていると安堵の笑顔(写真◎スクリーンショット)
「何を意識すべきで、何を気をつけなければいけないか」
ACLで5連勝して首位突破を決め、最後の浦項スティーラーズ(韓国)戦は1-1でドロー、5勝1分けでグループステージを終えた名古屋グランパスはしかし、帰国しても一息つくわけにはいかない。7月14日に天皇杯3回戦でファジアーノ岡山と戦って、中2日でサガン鳥栖とのリーグ戦をこなして、ようやく中断に入るスケジュールだ。
稲垣祥はACLの過酷な中2日の6連戦を終えて、「選手のみならずスタッフを含め、ああいった環境で過ごして戦い抜いたところに自分たちも一体感を感じるところがありますし、その意味でもいい経験ができたと思いました」と振り返る。慣れないタイでおよそ3週間の隔離生活と6試合。勝ち点16とラウンド16進出、そしてもう一つ、大切なきずなを手に入れたようだ。
ACLでは多くの選手に出場の機会が与えられ、組み合わせや4-3-3へのフォーメーションの変化もつけて、単に勝利を積み重ねるだけではなくチームの地力を蓄える機会にもなった。
「見てもらった通り、立ち位置の変化で自分たちで違いをつくることができますし、出ている選手の組み合わせでも変化が生まれています。今回のACLでは特に前線でより多くの組み合わせでプレーして引き出しが増えたと思います。フォーメーションが変わったときにも自分たちが何を意識すべきで、何を気をつけなければいけないか、試合を重ねるごとに整理されていって共有が深まったと思います」
今度はそれを国内の大会で表現することになるが、逆に「ACL慣れ」した感覚をもとに戻す作業が必要になってくる。これがなかなか難しいと、稲垣は感じている。
「個人としてもチームとしても、気をつけなければいけないポイントの一つだと考えています。ピッチも審判の笛も天候も相手の特徴を踏まえても、だいぶ違ったものになるので、国内仕様に基準を合わせないといけないと思います。簡単ではないですが、気をつけながら2試合をやりたいと思っています」
中でもレフェリングとの向き合い方については慎重さが欠かせない。アジアの戦いでは、日本で意識する強度でプレーするとファウルと判定されやすかった。
「ACLだと警告の累積も頭に入れながら、一歩踏み込んだ守備をしないところもありました。でも、Jリーグや天皇杯でそれだとスキを突かれてしまいます。強度を戻さないといけないですね」
まずは14日の天皇杯でファジアーノ岡山と対戦する。J2で13位のチームだが、だからこそしっかりと「日本仕様」の戦いで勝ち抜かなければならない。
「中断までの最後の2試合を前に、いま変にスイッチを切るのではなくて緊張感はある程度保ったままやっていければ」
カテゴリーが下の相手に勝利が求められるのはもちろん、国内と国外の基準の違いにもきっちりとアジャストする、チーム力の高さが問われるだろう。