上写真=稲垣祥は今季J1の全20試合に出場。5得点はマテウスに次いで2番目に多く、キャリアハイに並んだ(写真◎J.LEAGUE)
「一人の選手として信頼されて出るわけですから」
稲垣祥のプロフェッショナリズムが垣間見えたのは、6月9日の天皇杯2回戦、三菱水島FC戦に話が及んだときのことだった。丸山祐市が負傷で戦線離脱していて、中谷進之介は日本代表に参加しているため不在。今季、セレッソ大阪から加わった木本恭生と、アカデミー出身で20歳の藤井陽也が起用されることが考えられる。
ボランチの稲垣としては、センターバックとの関係性はチームのコアの部分になるから重要になる。
「出た選手が責任を持ってやるだけですし、特別気にかけてフォローすることはないですね。一人の選手として信頼されて出るわけですから、グランパスの一員としてしっかりプレーするだけだと思います」
気負いもてらいも飾りもない言葉。プロとしてピッチに立つ以上は責任が求められるし、それは経験や年齢など関係ない世界で、自分自身もそうやって生きてきた、という自負に聞こえる。非常に重い。
相手は中国リーグに参加しているチームで、実力差は歴然としている。ジャイアントキリングを狙って向かってくるのはよくあることだ。
「自分たちらしく目を向けてとやりたい、というところですけど、現実としては難しさもあったりスタジアムや対戦相手がいつもと違う感じなので、その雰囲気を含めてしっかり自分たちができることを最大限やりながら、その中でもどう戦うか、表現するかは変わらないのでブレずにやっていきたい」
見る側にとってはそのせめぎ合いが楽しみにもなるが、名古屋がどうやって相手のがむしゃらさをいなしていくかは試合のポイントになりそうだ。
「相手がどう出てきているのかを感じられるチームだと思いますし、どういう形で来られても自分たちが培ってきた経験や引き出しからぶつけていくだけだと思っています」
経験の深さや引き出しの数では負けるわけはない。食ってやろう、とハングリーさを持って向かってくる相手に対して、稲垣がやるべきは「コントロール」だと話す。
「もちろん、そういう気持ちで臨んでくる相手がほとんどで、天皇杯の醍醐味がそこにあると思います。精神的な準備は必要なことですし、0-0の時間が長引けば長引くほど、ネガティブな雰囲気に包まれます。それを踏まえてチームとしての重心を、やるべきことをコントロールしていきたい」
天皇杯が終われば、タイに渡って6月22日からAFCチャンピオンズリーグに臨む。気持ちよくACLに向かうためにも、天皇杯ではプロとして実力通りに勝つことが求められる。