上写真=横浜FC戦ではフル出場。ジェジエウとコンビを組んで完封勝利に貢献した(写真◎J.LEAGUE)
「ここまですごいとは思わなかったです」
「アンカー脇を狙え!」
アンカーシステムを採用する相手と戦うとき、アンカー、つまり最終ラインの前を1人でカバーする選手の両脇にできるスペースを攻略しようとするのは定石だ。4-3-3の配置でアンカーシステムを操る川崎フロンターレと対戦するチームは、まさにそこを狙ってくる。
面白いのは、川崎Fのセンターバック、車屋紳太郎が自分たちのアンカーの脇を「攻略」しようとしていることだ。
「アンカー脇が空いていることが多いので、スペースがあれば僕もジェジエウも運んでいくのは意識していることです」
6月2日のJ1第21節・横浜FC戦では日本代表、U-24日本代表に選ばれた計5人の選手を欠く戦いとなったが、2-0で貫録勝ち。車屋もフル出場して貢献したのだが、先制ゴールはまさにジェジエウがドリブルで「アンカー脇」に運んでから右の家長昭博に預けたところがきっかけだったし、車屋も何度も持ち出して起点になった。
「去年、4-3-3をやり始めて、それまでだとダブルボランチにシンプルに預けて組み立てるシーンが多かったんですけど、アンカーが一人だと相手もそこをつぶしに来ます。仲間に託すだけではなく、自分から攻撃を開始してスペースがあったら運ぶようにしています」
アンカーとインサイドハーフ2人の逆三角形では、多くの選手を前線でプレーさせるメリットがある。その分、センターバックがアンカーの両脇をうまく活用できれば、川崎Fの攻撃的なスタイルがより厚みを増す。
アンカーにはジョアン・シミッチが入ることが多い。今季名古屋グランパスから加わったこのブラジル人の能力には舌を巻くばかりだ。車屋は感嘆の言葉を並べる。
「一緒に入って、すごくいい選手だと思いました。想像以上でした。ここまですごいとは思わなかったです」
シミッチも車屋も左利きだから、「レフティーコネクション」ができる。
「ジョアンは狭いスペースでも受けられるし、左を向いているようで体をひねって右に蹴ることもできます。左利き独特の、左で持って右サイドに巻いて蹴るキックは自分も(感覚が)わかるので、ジョアンがプレーしやすいようにと意識しています」
だから、安心して任せることができる。
「相手が近くにいても預けておけば前につけられるのは、他の選手にないところで、そこまで距離を取らなくても長いボールも出せる選手です。だから信頼してシンプルに預けたり、ジョアンにボールが入ったときに左の横から僕が受けて運んだり、最近は組むことが多いのでそういう関係性は意識しています。高さもあるのでヘディングでも競ってくれます」
車屋が横浜FC戦で見せた存在感とシミッチとの連係で、「アンカー脇」から仕掛けていく。