上写真=今季初ゴールで安心の笑顔。知念慶が今季初先発で勝利に貢献した(写真◎J.LEAGUE)
■2021年4月14日 明治安田生命J1リーグ第19節(@等々力/観衆6,958人)
川崎F 3-1 福岡
得点:(川)遠野大弥、知念慶、山根視来
(福)エミル・サロモンソン
「うまく触ったと思います」
「詳しくは覚えていないんですけど…」
川崎フロンターレのFW知念慶は、今季初ゴールのその瞬間、無我夢中だった。
「(遠野)大弥がシュートを打ったこぼれ球に詰めようと思って中に入ったら来たので、うまく触ったと思います」
今季、初めての先発を告げられたゲームだった。
「チャンスをものにしようとしていたので、ホッとしたというか安心しました」
1-1で迎えた55分、右からの山根視来のセンタリングをGKがパンチング、こぼれたボールを遠野が狙い、ゴール前に入っていた知念が左足でコースを変えて押し込んだ。価値ある勝ち越しゴールだ。
試合前からの霧雨がどんどん強くなり、遠野のゴールで先制していたものの、前半アディショナルタイムにFKを直接決められて同点とされる展開。しかも、雷の影響で後半のキックオフが通常より20分ほど遅れた。そんな長いハーフタイムを経て、仕切り直しの後半からわずか10分という早い段階での得点だったことが、チームを勢いづけた。
ぶつかりすぎず、ぶつける
知念にとってこのゴールが素晴らしいのは、組み立てに参加した上でフィニッシュを担当したという連続性がもたらしたものだったからだ。一度、ハーフウェーライン付近で谷口彰悟のヘッドをポストプレーで受けて脇坂泰斗に落とし、左の長谷川竜也に展開されたときに今度は横に入ってパスを引き出すと、すぐさま右の山根に展開、そのまま真っすぐゴール前に入っていった。
「いまの川崎はフォワードの周りにサポートでシャドーの選手が来てくれるので、うまく絡みながらというのは意識していました」
体の強さを生かしたポスト、相手につかまらない場所で受けてさばくポジショニング、そしてゴール前に潜り込んで押し込むフィニッシュ。持ち味がたっぷり詰まった一発だった。
「ぶつかりすぎずというか、間で受けられるように意識しましたけど、要所では体をぶつけようとやっていました」
体の強さを生かすところと、強さを使わずに切り抜けるところのバランスを保つことで、どちらにも力を発揮できたというわけだ。
「フォワードとしていい仕事をした」と鬼木達監督
「オニさん(鬼木達監督)にはとにかく自分の良さを出せと口酸っぱく言われてきたので、良さ出すこと意識して試合に臨みました」
その鬼木監督は極めて高い評価を与えている。
「知念はチャンスがなかなかない中で、今日は悪条件でも体を張ってプレーするところは相手も嫌がったと思います。走るところ、前に突破にかかるところ、キープするところ、起点になるところ、いろいろなところで良さが出ました。どんな形でも点を取るのはフォワードとしていい仕事をしたと思います」
川崎Fの4-3-3システムにおける1トップには、レアンドロ・ダミアンと小林悠がいる。そこに、大分トリニータでの武者修行を終えて帰ってきた知念が、堂々と結果を残した。
「チームがここまで負けていなくて、自分がスタメンのときに負けたらどうしようという不安もあったんですけど、勝ててホッとしています」
まずはシーズン初ゴールというファーストステップをクリアした背番号20が、健全で日本一厳格な競争に名乗りを挙げた。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE