明治安田生命J1リーグで優勝を決めた川崎フロンターレにあって、この長身FWの存在は欠くことはできない。レアンドロ・ダミアンはガンバ大阪戦で先制ゴールを決めたほか、家長昭博のハットトリックすべてに絡む大活躍だった。
上写真=中村憲剛とともに笑顔を見せるレアンドロ・ダミアン。自身初のJ1優勝だ(写真◎J.LEAGUE)
■2020年11月25日 J1リーグ第29節(@等々力:観衆11,360人)
川崎F 5-0 G大阪
得点者:(川)レアンドロ・ダミアン、家長昭博3、齋藤学
ノボリからの素晴らしいセンタリングでした
フライング・ブラジリアンだ!
ガンバ大阪に引き分け以上で優勝という一戦で、川崎フロンターレが引き分けを狙うはずがない。今季、貫いてきた攻撃的な姿勢をキックオフからこれでもかと押し出していって、その流れを決定的なものにしたのが22分、レアンドロ・ダミアンが決めた先制点だった。
家長昭博のパスで自らポストプレーに入って田中碧にワンタッチで下げてから、左の登里享平に入ったのが合図だった。レアンドロ・ダミアンは突如ダッシュして相手のセンターバックの間を抜けて昌子源の背中側を取ったところに、登里から高速クロスが届く。空を飛ぶようにジャンプして伸ばした右足で、ボールをゴールに送り込んだ。
「ノボリ(登里)からの素晴らしいセンタリングでした。フロンターレというチームにおいてはなかなかクロスに特徴はなくて、基本的にはボールポゼッションをするスタイル。その中で、あのような素晴らしいクロスを上げてくれて、自分は押し込むだけだったので本当に助かりました」
自ら組み立てに参加しながらフィニッシュワークにかかって仕留める。まさしくレアンドロ・ダミアンらしいゴールだった。
このあと、家長昭博がハットトリックを達成するのだが、そのすべてに関わっているという事実も凄まじい。
45分のゴールは田中の右CKをヘッドでつないで、そのボールを家長が蹴り込んだ。49分の家長の2点目は、今季の成長の原動力である「守備」の意識が攻撃のスイッチになった。G大阪に攻め込まれたところをダッシュで自陣に戻ってクリア、これが守田英正に渡り、さらにこぼれたボールを三笘薫が収めてドリブル開始、最後は家長に渡してフィニッシュという流れだった。ハットトリック完成となる73分のゴールは、左タッチライン際で登里からの縦パスを受け、後ろを向いている状態からまるで背中に目があるかのように左足で前方のスペースへ。ここにいたのが三笘だ。またしてもドリブルで運んでラストパス、家長もきっちりと決めた。
83分に退いたために90分の5点目には絡めなかったが、家長とともに、間違いなくゴールショーのもう一人の主役になった。
レアンドロ・ダミアンにとっては、初めてのJ1リーグ制覇になる。
「本当に率直にうれしく思いますし、フロンターレとしてはここ数年、毎年タイトルを取ってきているチームだったので、自分がそこに少しゴールという結果でサポートすることができたんじゃないかなと思っています」
少し、どころではないだろう。これで12ゴールとして、13ゴールの小林悠に続き、三笘薫と並んでチーム内得点ランク2位だ。鬼木達監督が採用した4-3-3システムも1トップにレアンドロ・ダミアンと小林がいるからこそ機能した。
「個人的に思うところは、今季はとてもアグレッシブな形で攻撃ができたのではないかということ。1-0で終わるのではなく、2-0、3-0と、もちろん監督からの指示ではありますが、選手たちがピッチの中で表現できているからこそ、このたくさんのゴールが生まれてきたと思っています」
そして、ディフェンスだ。188センチの長身を揺らして最前線から激しいプレスを仕掛ける姿は、超攻撃的なスタイルの欠かせない一部として今季の川崎Fの代名詞になった。真摯にボール奪回に体を張るレアンドロ・ダミアンの努力が、多くのゴールにつながった。
「監督にも練習の中から要求されていて、前から激しくプレスをかけるように言われています。自分だけではなくチームの形としてあって、自分の代わりにユウ(小林悠)が出た時はユウがピッチの中で表現します。プレスをすることによって高い位置でボールを奪うからこそ、フロンターレのスタイルでプレーができるのです。それをうまく表現できているのかなと思います」
守備のための攻撃、攻撃のための守備。鬼木監督が「新しいチャレンジ」としたスタイルの中心に、この「空飛ぶブラジル人」がいたのだった。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE