上写真=現状分析と改善策。阿部浩之の言葉には上昇へのエッセンスが詰まっている(写真◎スクリーンショット)
「2人だけの関係では点は取れません」
マッシモ・フィッカデンティ監督が「2位を目指す」と明言している名古屋グランパスだが、前節、サンフレッチェ広島に0-2と敗れて痛い星を落とした。エースの金崎夢生が負傷退場、その前のサガン鳥栖戦でも山崎凌吾が負傷していて、FWに連続でアクシデントが襲ってきた。
攻撃の軸となる阿部浩之にとっても頭の痛いところだろう…と想像してしまうが、この人はさすが発想が違う。
「アクシデントはありましたけど、逆に言えば他の選手からすればチャンスですよね。そういう意味では勢いが足りないと思います。アクシデントがあるから工夫が足りなくなっているのか分からないけれど、正直まだまだ物足りない」
勢いも工夫も足りない。金言その1だ。
「攻撃は、各々の特徴を生かさないとうまくいきません。工夫しながら自分の特徴を生かしつつ、周りの特徴を引き出さないとうまくいかないんです。自分で特徴を出すのは当たり前で、それ以外にスペースを作ったりして周りを生かすことが足りない、ということです」
自分を出すのは当たり前。その上で、味方の特徴を生かすためのアクションが足りない。金言その2だ。
「例えばスピードを生かすのも、タイミングなんです。でもそれは、出し手と受け手だけでも無理で、他の人がうまく相手を引き寄せてスペースを作ったりしなければならなくて、2人だけの関係では点は取れません。ボールにかかわったり、ボール取るためのポジショニングや動かし方をすることが数人でしかできていません」
金言その3は、出し手と受け手だけでサッカーはできない、ということだ。その部分を「探り探りやっている感じ」だと見ている。「思い切るという部分は攻撃に必要ですが、アクションが早すぎたり遅すぎたりして、タイミングがめちゃくちゃいいというのが少ないんです。相手に守りやすい状況を自分たちから作ってしまっているという感じです」とも。
金言その4は自分自身への「下がるな」の喝だ。
「ベストは下がらずにゴール前でターンしたり、誰かを使って前向きの状態を作ることです。チームとしてそこを狙うのは相手にとっては嫌な攻撃になるので、リスクはあるけれどそこに(ボールを)入れていかないと崩れないし、入れればほかのエリアも開いてきます。もっとチャレンジしていいし、自分も呼び込んでいければと思います」
その原因が、金言その5に当たると言っていいだろう。すり合わせること、だ。
「できる限り下がらないのがベストで、全体で上がっていくのも大事です。ただ、降りたところでのアイディアも少ないし、全員が同じ共通意識を持っていません。どこを目指すのかがちょっと合っていないという状態が続いています。練習からすり合わせているし、試合でも1回1回の攻撃でコミュニケーションを取ってちょっとずつ合わせていかないと」
そんな思いを抱きながら、次のFC東京戦に向かう。
「ここまでやってきたことは積み上がっていて、でも相手にそこを守られたときに手がないんです。どんどん前に来てくれるチームには有効な場面が多いけれど、広島戦は課題が出やすい試合になってしまいました」
FC東京も堅守が戻ってきた。北海道コンサドーレ札幌との前節では札幌の攻撃をしっかり跳ね返してカウンターを繰り出した。広い意味では広島と同じような戦い方をしてくるタイプで、阿部の金言がまたも試される試合になるかもしれない。
「残り数試合で、ACLの出場圏内に入るにはどの試合も落とせません」
FC東京との対戦は8月15日のJ1第10節で0-1、9月2日のルヴァンカップ準々決勝で0-3とまだ1点も奪えていない。阿部は負傷でリーグ戦では欠場、カップ戦はその負傷からの復帰戦になって11分プレーしただけだ。
だからFC東京は「グランパスの阿部浩之」のすごさをまだ知らない。