上写真=後半開始前、仲間をピッチに送り出す中村憲剛。右はレアンドロ・ダミアン(写真◎Getty Images)
負けは自分たちの問題(L・ダミアン)
対戦相手の札幌のプレーが素晴らしかった。それは間違いないが、首位を走る川崎フロンターレの選手たちは、相手よりも自分たちにベクトルを向けていた。どんな相手に対しても自分たちの持ち味を最大限発揮して勝利を収めるのが、フロンターレの目指すところだからだ。
その意味で「らしさ」をまったく出せなかったのが札幌戦だった。11月1日の中村憲剛の引退発表後、最初のゲームであり、試合後にはその影響についての質問も出た。鬼木達監督はこう言っている。
「正直、分からないところですけど、結果として、これだけ体が動かなかったと。体は動かすのは頭だと思います。その意味で言うと、(今日は頭の)フレッシュさはなかったのかなと思いますし、それがすべてだとは思いませんけど、多少なりとも、もしかしたら人間ですので、そういうこともあったのかもしれない。今はそう思っていますがただ、そこは確認しないと分かりません」
指揮官のコメントを聞くにつけ、改めてチームにおける中村憲剛というプレーヤーの存在の大きさが分かる。ただ、引退発表がゲームに影響を及ぼしたという見立てにはそのニュアンスを汲み取ると『懐疑的』と受け取れた。
右サイドバックで先発した山根は、札幌戦への影響を問われて、こう言っている。
「憲剛さんの引退は、僕は今年からなのでちょっとしか一緒にやっていないですけど、少なからず気持ちの動きはありました。でも、憲剛さんが発表したあとの試合で絶対に負けられないというふうに、話してはいないですけど、みんなが思っていたと思います。今日の試合はちょっと、自陣でボールを失う回数が多かった。五分五分のボールを相手にこぼしてしまうのがよくなかったと思います」
CFを務めたレアンドロ・ダミアンは、こうだ。
「偉大なる選手が引退するということで、それについてはとても残念です。ただ、これは彼の決意ですし、自分たちは理解しなければいけない。彼がここまで築き上げ、創り上げてきたものを、今度は自分たちがサポートしながら彼のためにやっていきたいと思っています。もちろん、彼の引退というものはクラブにとってすごく影響が大きいものです。しかし、そのことが今日の試合に影響したかと言ったら、それは別の話です。今日の敗戦は、自分たちがやるべきことができなかった、ただそれだけと思います」
「負けられない」と発奮材料にした山根は言い、L・ダミアンは「別の話」だと語った。
ユニフォームを着る中村憲剛と過ごせる限られた時間を、最高の形にしたいーー。その思いは、チームで共有されている。
次戦は、14日の鹿島戦だ。11日に行なわれる試合でガンバ大阪が神戸に敗れ、14日にガンバ大阪が仙台、セレッソ大阪が清水にそれぞれ敗れた場合に、川崎Fが鹿島に勝てば、優勝は決まる(川崎Fの勝ち点は71となり、G大阪とC大阪は残り試合にすべて勝っても70ポイント)。
7試合を残しての優勝決定は、2010年の名古屋グランパスの記録を大きく更新する史上最速。最強フロンターレを記録でも証明し、中村憲剛の花道を飾ることになる。