上写真=鹿島戦は激戦必至。フィッカデンティ監督は「気持ちの準備」にも力を入れるという(写真◎Getty Images)
「先制点を早めに取りにいく」
名古屋グランパスは鹿島アントラーズに対しては、昨年2敗、今年も1敗と3連敗中。10月最後の日に行なわれるJ1第25節で、借りは返すつもりだ。
「難しくかつ重要なゲームになると思います。強度の高い、どちらもアグレッシブな戦いをする90分になるでしょう。鹿島は鹿島らしい勝ち切る強さを持っています。その部分で負けてはいけません。サッカーのやり方も大事ですけれど、気持ちの準備もかなりしています」
マッシモ・フィッカデンティ監督の気持ちのこもった言葉から伝わるのは、間違いなく激しいゲームになるということだ。勝ち点45で並んでいて、消化試合数は名古屋が1試合少ないから、勝利を収めれば新しい目標である「2位」に向けて大きな一歩になる。
だが、相手はなんと言っても鹿島だ。一筋縄ではいかない、いわば面倒なチーム。戦う前から対戦相手にそう思わせること自体が、鹿島の強さの一端を示している。でも、負けるわけにはいかない。
「鹿島はカメレオンのようなチームです」とフィッカデンティ監督は独特の表現で警戒を強める。
「試合が始まってから用意したプランがうまくいかないときに、前向きな意味でやり方をシンプルに変えてくることのできるチームです。それを実現するために不可欠な素晴らしいセンターフォワードもいます。結果を得て、手応えを感じた上で、武器を持っています。その戦い方を最初から一番の狙いにすることもあります」
今季はザーゴ監督が就任して序盤は苦しんだ鹿島だが、いまでは上位。さすがというほかない。ザーゴ流のボールを大切にするスタイルがうまくいかなければ、割り切ってダイレクトプレーで直線的にゴールに迫っていく。フィッカデンティ監督はその脅威を否定はしない。
では、「カメレオン」に対して、名古屋はどう戦っていくべきなのか。
「自分たちでやるべきサッカーを捨てて対応することはやってはいけないんです」
相手に合わせて信念を覆い隠した状態で戦うことは避けなければいけない、ということだ。消極性がスキを生む。
「鹿島は前向きにどんどん攻めてきて、試合を彼らのペースで進めるという戦い方をしてきます。だからこちらが早く得点を取ることによって、鹿島にとってはゲームがリスクの高いバランスに変わっていくことになります。(名古屋が先制して鹿島が追いかける展開になって攻めてくれば、その裏に)広大なスペースがある状態で試合を作れればやりやすいですからね。先制点を早めに取りにいくことを狙っていきたいと思います」
先にリードを奪えば、相手がリスク承知で前に出てくる。その状態にいかに持ち込むことができるか。得点を奪うことも大事だが、早々に失点してはそのプランも崩れてしまう。好調のエヴェラウドをどう封じるかも、同時に大事なミッションになってくる。
「プロの世界で際立つ強さを持っている選手の特徴は完全には消すことはできません。世界中、サッカーの世界ではそうだと思います。どれだけ制限するかになってきます。当たり前のことですが、まずはしっかりと丸裸にして、こういう良さがあるから危ない、逆にこういうプレーは苦手だと分析した上で、対峙するセンターバック2人だけではなく、そういうシチュエーションにならないように周りがその前でどう抑えるか。当たり前ですが、相手のいい部分が試合に出ないようにする準備をした上で、試合でも一瞬も気を抜かないようにやるべきで、それに尽きると思います」
やっかいなエヴェラウド。やっかいなアントラーズ。しかし、ここを突破すれば暫定2位の可能性もある。名古屋にとっては天下分け目の戦いが間もなくやってくる。