上写真=憲剛節は健在。それが何よりだ(写真◎スクリーンショット)
「すべてにおいて有意義な」
「緊張しましたね、正直、最初は」
百戦錬磨の大ベテランの口からそんな言葉が出るのは、少しだけ意外なようにも思えたが、左膝前十字靭帯損傷、左膝外側半月板損傷という大ケガからの先発復帰に、そんな感覚に襲われたという。
最初にスタメンを言い渡されたのは前日のミーティングの席だったという。その感想は「マジか!」。
緊張した理由はいくつかあるようだ。
「まず、去年の11月以来の先発で、フロンターレが新しい取り組みをしている中で、前回(第13節清水エスパルス戦)は途中からだったけど今回はスタートからということ。連戦の間には練習試合もできなかったので、ぶっつけ本番のところがあったこと。そういう意味ではいままでやってきた感覚でスタートというよりも、新しい気持ちで迎えられました」
では、その実感は?
「試合に出なければ分からないことはやっぱりあって、今回最初から使ってもらったのは過程をすっ飛ばしたところもあるんだけど、すごく大きかった。相手がフレッシュで守備組織を組んでくるような状態で試合に出ることが大事なんだと、監督が言ってくれたのがありがたかったですね。それに応えないといけない立場だし、そういう意味ではどんどんやっていきたい」
「45分やりましたけど、収穫しかないというか、すべてにおいて有意義な時間になったなと思っています。あとは45分の中でもヒザが痛まなかったことと、リバウンドもないこと。清水戦は15分しかやってないのに異常な疲れがあって、今回はそれがないので練習ってすごいなって。その成果が出ていると思います」
その口調に、まったくよどみがない。憲剛節が健在だということが、何より充実感を物語っている。
「やっぱり出たい、出してくれと思えた自分がうれしかったですね。もっともっとやらないとな、ってずっとポジティブな感じです。そう思いながらも、コンディションのことやチーム内での立ち位置は理解しているので、やっていくしかないなと思っています」
45分という時間は、やはり長く感じたようだ。
「清水戦が15分だけだったので、今回も途中から出て20〜30分ぐらいかと思ったんだけど、おっ、スタートからかと。始めて5分でこんなに疲れるのか、あと40分もあるのかと思いましたよ。こういう風にやって上げていくんだなと初めてに近い形で体感しました。これだけ離れていたことはないので、長期離脱からの体力の戻し方も初めて勉強していて、それも含めて新鮮でした」
何もかもが新しい。そう思える先発復帰だった。
試合後には、横浜FCで先発してJ1最年長出場記録を達成したカズとユニフォームを交換したという。クラブハウスに飾ってあるそうだ。53歳のレジェンドに比べれば、39歳なんてまだまだ若造。背番号11のユニフォームが、何かの大切なしるしのように、新しい中村憲剛の道を明るく照らすのかもしれない。