上写真=FC東京戦で米本と阿部を復帰させたフィッカデンティ監督。試合には負けたが今後に生きるはず(写真◎Getty Images)
「驚きではありません」
米本拓司と阿部浩之への信頼は、とてつもなく深く大きいようだ。
マッシモ・フィッカデンティ監督は「スピード感のあるサッカーに導く選手が2人、欠けていた」と認める。それが背番号2のボランチ、米本と、背番号11のMF阿部のこと。負傷で欠場していた2人を9月2日のJリーグYBCルヴァンカップ準々決勝、FC東京戦で途中から起用し、試合には0-3で敗れたものの、「彼らが入ったら違ったテンポになった」とその効果を実感している。
2人がピッチを離れたのは第8節の柏レイソル戦から。それ以降のリーグ戦では3勝1分け2敗だ。最悪ではない。しかし、2人がいないから2敗している、という考え方もできて、フィッカデンティ監督も「2人が抜けて、作り直せる選手がいなかった」と分析している。ただし、川崎フロンターレの連勝を10で止めた最高のゲームも、2人が欠場したときだ。「試合数が多く、思った通りのコンディションではないので、簡単には言えない」とすべてが悪かったわけでもないと示唆している。
そのFC東京戦では米本が後半45分間を戦って、阿部も79分から登場。豪雨という特異なコンディションの中ではあっても、実戦の感触を確かめることができたのは大きいだろう。
「彼らがいたときにできていたことが、だんだんできなくなっていきました。ただ、彼らはチームのために何をすべきか分かっているので、特別なプレーを出してほしいということはありません」
つまり、2人が復帰してからも普段どおりのプレーをするだけで、また活力にあふれてスピード感のある名古屋のサッカーが戻ってくる自信しかない、というわけだ。
「2人が戻って単純にプラス2になるのではなく、何をもたらしてくれるかを考えるとものすごく大きいです。それに、このスケジュールでは疲れている選手を休ませるのが最も簡単な解消法で、その意味でも2人が戻るのは大きいことです」
チーム全体のコンディションを考える上でも重要な復帰。ルヴァンカップは敗退したので、ここからはリーグに集中していくだけだ。次の相手は、難敵・鹿島アントラーズ。
「相手はいい状態にあると思っています。結果が出ていて内容もいい。これまでも言ってきましたが、確実に結果を残し続けているのは日本では鹿島だけ。そのベース、底力、あるべき姿を持ち続けています。だから、調子を上げてきたのは驚きではありません」
そういって警戒するが、こちらも米本と阿部が帰ってきたし、出ずっぱりだった吉田豊も休ませてコンディションを調整させている。準備は万端だ。
名古屋の「川崎F追撃物語」、第2章はここから始まる。