上写真=フィッカデンティ監督の古巣への秘策は?(写真◎J.LEAGUE)
FC東京には「個で打開できる選手がいる」
JリーグYBCルヴァンカップでは8月12日のグループステージ最終戦で川崎フロンターレに2-2と首尾よく引き分けて、プライムステージ進出を決めた。一仕事終えたマッシモ・フィッカデンティ監督だが、今年は一息入れる余裕もない。中2日でJ1第10節のFC東京戦が待ち構える。
ご存知の通り、フィッカデンティ監督の古巣だ。「私が東京にいたときにプレーした選手が何人もいますし、いろいろなチームを率いてきてそれぞれに思い出はありますが、東京では高いレベルでサッカーができて、リーグ制覇を現実的なものとして取り組むことができました。選手だけではなく、一緒に仕事をしてくれたすべての人やサポーターも近くにいてくれました。日本で最初に指揮を執ったチームとして、一生変わることなく心に残り続けると思います」。頭の中に思い出がよぎったのだろう、とても柔らかい口調で語ったのだった。
ただ、勝負はまた別の話。FC東京へは「最大級の警戒をしなければならない」と話して、勝負師の顔に戻った。
「こちらがどんな手で抑えていっても、個で局面を打開できる選手がいて、彼らにやられてしまう可能性もあります。どれだけチームとして結果を得られるかという準備をしたいと思います」
FC東京の最大の特徴は縦へのスピードだ。フィッカデンティ監督ももちろん、そこにポイントを置く。
「特にスピードを生かして縦に行けるのは、相手から奪った瞬間です。攻撃しようとしているので、守備という見方からすると理想的な配置になっていません。その瞬間が縦に進んでいくのに生かしたいシチュエーションだと思います。それをひっくり返して見ると、なるべくこちらはそういう配置をしないようにしたり、ボールを失わないことです。危ないカウンターを受けるリスクを犯さないプレーをすべきだと思います」
リスク管理の徹底が改めて求められるところだが、緻密にパスで組み立ててくる川崎F戦の3日後に鋭いカウンターを持つFC東京と、際立つ個性を武器にするチームとの連戦になる。だが、フィッカデンティ監督は「両方のいいところを持っているのはうちだと思っていますよ」とニヤリと笑ってあふれる自信を口にするのだ。
「時間帯によって、チームとしてやるべきことを伝えた瞬間に、チーム全体でその方向にプレーを向けていくことはできています。縦に急ごうと言えば、その良さを特にサイドの選手を中心にどんどん仕掛けられますし、つなごうと言えば、ディフェンスラインの選手も含めてみんなボールを扱う技術があります。必要なものを兼ね備えたチームにしたいと思いますし、そういう戦い方ができていると思います」
もちろん、リスペクトは忘れていない。だが、どんなチームがどんな方法で向かってきても、対応できるというわけだ。
本当に強い者が持つことのできる「柔軟性」が試されるFC東京戦。9月2日のルヴァンカップ準々決勝でもFC東京と対戦することになったが、まずはこの最初の対決でみなぎる充実ぶりを見せつけておきたい。