上写真=チームを上昇気流に乗せている柏のネルシーニョ監督(写真◎Getty Images)
勝利だけは続かず、負けだけも続かない
柏レイソルは他クラブとは異なり、Jクラブとの対外試合を行なわず、感染防止対策を徹底してリーグ再開に臨んだ。試合勘の部分で他チームに比べて遅れを取ったことは否めないが、ネルシーニョ監督にとってはそれも織り込み済みだった。
「今シーズンが始まってすぐに新型コロナウイルスの影響で、リーグは中断し、しばらくの間、自粛期間というものが続いた。再開にあたって思うようなスタートも切れなかった。しかし、ここ3試合はチームとして取り組んできた成果が出ている。生産性も徐々に増してきているし、判断の部分でも上がってきた。結果が出ていることで選手がモチベーション高く取り組んでくれている。まだまだ成長過程にはあるが、ようやくペースを取り戻してきた」
再開のリーグ戦は3連敗スタート。しかし、湘南ベルマーレとの試合に3-2で勝利を収めると、そこから浦和レッズに4-0、ベガルタ仙台に5-1と大勝で3連勝を飾った。チームの好調の理由について問われると、指揮官は落ち着き払った表情で、言った。
「3連敗中も、この状況がずっと続くわけはないだろうと信じてトレーニングに励んできました。コインをフリップさせるのと同じで必ず表裏がある。勝利だけは続かないし、負けだけも続かない。これまでもいろんな障害や困難をチームで乗り越えてきた。この3連敗はチームの正念場ではあったと思いますが、それを乗り越えられたことで自信につながっている。ただ、何か特別な取り組みをしたわけではない。勝ったから負けたで一喜一憂しないのがわれわれのフィロソフィー(哲学)。選手たちにもそう伝えてきているし、そのことをよく理解してやってくれている」
不断の努力と変わらぬ哲学。一切ブレない姿勢が、現在の柏の強みでもあるだろう。選手たちは同じベクトルの中で切磋琢磨し、試合に出れば活躍するという好循環も生まれ始めている。例年に過密日程の中で「総合力」が問われるシーズン。この循環が続く限り、チームは力強く歩んでいける。
今週末からは、いよいよ東日本を出て、長距離移動を伴うリーグ戦がスタートする。新型コロナウイルスが再び感染拡大傾向にある現在、これまで以上にリスク管理が必要になるが、指揮官は冷静だった。
「一番手っ取り早いのは、自宅でこの状況が過ぎるのをただただ待っていればいいのでしょうが、そういうわけにもいかない。リーグは再開されて、戦いの真っ只中にいるわけですから、戦わないわけにはいかない。その中でわれわれとしては、これまでやってきた感染予防対策に付け加えて、遠征という部分で、プロトコルに新たなものを付け加えていく、臨機応変に対応していければと思っています」
また、週末に対戦する相手の名古屋については「守備からしっかり入れるチーム。昨年はジョー選手が前線にいて空中戦に持ち込む特徴があったが、今年は前線の選手が刷新され、ボールを動かせる技術の高い選手がそろっている。コンパクトな守備からスピードを生かしたカウンターに特長がある」と印象を語り、「拮抗した試合になる。レイソルにとって落とせない試合だが、名古屋にとってもこの先、戦いを進めていく上で落とせない試合。タフなゲームになるでしょう」と見通しを語った。
リーグ戦4連勝がかかる名古屋戦。ネルシーニョレイソルは変わらぬ準備で「落とせない試合」に臨む。