上写真=中谷は無失点の3連勝に攻守で貢献している(写真◎J.LEAGUE)
「一瞬の迷いがなくなった」
好調の理由はさまざまだが、最終ラインからチームを俯瞰で見ることのできるセンターバックの視座は興味深い。中谷進之介が現状分析として挙げたのは、主に「楽ができていること」「話をすること」「昨年の経験」だった。
「僕たちセンターバックに負担がない分、いい試合ができているのかなと思います。個人的には苦しい状況でパフォーマンスできる方がいい感触ありますが、僕たちが苦しい状況になっていないので、チームとしてはすごくいいのかなと思います」
「広範囲に動き回ってくれる選手が多いので、僕たちが動かざるを得ない状況を作られていなくて、動かないで待っていられるんです」
「ポジション柄、他の選手よりも動く範囲が少ないですし、中盤の選手が動いてくれるので、いい意味で楽をできています」
というわけで、最初の理由はセンターバックに負担がかかっていないこと。つまり、チーム全員でしっかりと守備を構築しているということになる。
別の言葉で言えば、「守備の安定感が出てきて、幹となるもの、軸となるものがあるのが大きい」わけで、「一瞬の迷いがなくなった」ことが自信につながっているのだという。
丸山祐市と組んでいる不動のセンターバックは、どちらも攻撃的センスを持っていることも自慢だ。第6節の大分トリニータ戦では攻撃の第一歩となるロングフィードを見せている。自陣から右サイド深くに送り込むきれいな弾道のパスを、成瀬竣平が香川勇気を振り切って受け、中央の前田直輝、金崎夢生と渡って、最後は米本拓司がミドルシュートをぶち込んでいる。
「前半から香川選手が食いついてきたので、成瀬が最初は足元で受けたがっていたんですけど、途中から裏を狙ってくれと話しました。2人で狙っていたところは感覚を合わせられたのかな」と納得のコンビネーションだった。相手のプレーの癖を見極めながら、ピッチの上でコミュニケーションを取ってこちらが変化することを厭わずに、優位性を高めていく。これが2番目の「話をすること」の利点だ。
そしてもう一つの「去年の経験」は、ここから先を見据えたときの話。2019年は12節まで7勝3分け2敗で2位につけていた。ところがここから暗転、監督交代もあって最終的に13位にまで落ち込んだのだった。だから、今年はこの6節まで絶好調と言えども、油断はしていない。
「正直、去年もこういう感じでした。それは自分たちが一番感じているし、最初の調子の良さを中盤以降もしっかり続けていって、ダメになりそうなときに踏みとどまって耐えて、いいときに持っていくのが大事になるんです」
いまのところは「ダメになりそう」な気配は感じられないが、大分戦では阿部浩之、稲垣祥、米本拓司が負傷により交代を余儀なくされていて、注意深くなる必要はある。警戒心を持ちながら、まずはこの3連戦で最後となるサンフレッチェ広島戦に向かっていく。