コントロールできることは100%やりきる
晴れやかに、清々しく。
谷口の表情には一点の曇りもない。
彼は常日頃、後悔なく毎日を過ごしてきた。いや、小さい後悔があると次の日に持ち越さないようにした。
「自分でコントロールできないところは仕方がない。でもコントロールできるところは100%でやり切る」
朝起きて、夜寝るまで。練習も居残りもストレッチなどのケアも、すべて「ちゃんとやった」という実感がないと納得できなかった。就寝前に、自分に問うのも日課だった。
「何かきょう一日、後悔を残してないか?」
その自問自答が彼を心身ともに頑丈な〝タフガイ〟にした。試合において100%全力の彼がいた。
サッカーにほれ込み、惑うことなく一直線に進んできた谷口博之の道のり。一心不乱のそのルーツは、少年時代にあった――。
(中編に続く)
≫≫中編◎昨季限りで引退した谷口博之の16年「一心不乱のルーツ」
Profile◎たにぐち・ひろゆき/1985年6月27日生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスのジュニアユース、ユースを経て、2004年に川崎Fに入団。翌05年シーズンからボランチとして定着し、06年にはJリーグカップのニューヒーロー賞を受賞、Jリーグベスト11にも選ばれた。08年にはU-23代表として北京五輪に出場している。11年に横浜FMに移籍し、13年に柏を経て、14年に期限付きで鳥栖に加入。15年に完全移籍を果たし、19年限りで現役を引退。16年のキャリアでボランチやCBとして活躍し、J1通算350試合52得点、J2通算11試合1得点の記録を残した。182cm、73kg