スコアが動いたのは後半だった。49分、杉岡大暉のクロスに山﨑凌吾が左足で合わせて湘南が先制。さらに、3分後には杉岡のシュートのこぼれ球を野田隆之介が押し込んで、リードを広げる。その後は鹿島の反撃に遭い、61分にセルジーニョ、73分に伊藤翔のゴールで同点に追いつかれるも、試合終了直前のラストプレーで坂圭祐が決勝ゴール。湘南が鹿島との打ち合いを制し、勝ち点3を獲得した。

上写真=持ち前の走力でチームの勝利に貢献した齊藤(写真◎J.LEAGUE)

■2019年8月3日 J1リーグ第21節
湘南 3-2 鹿島
得点者:(湘)山﨑凌吾、野田隆之介、坂圭祐 (鹿)セルジーニョ、伊藤翔

「この勝利で燃え尽きないように」

 2-2の同点で迎えた後半アディショナルタイム。時計は掲示された「6分」を示そうとしていた。湘南は左サイドでボールをキープし、CKを獲得。梅崎司のファーサイドをめがけて蹴ったボールが、マークについていた相手よりも一瞬早くジャンプして空中戦を制した坂圭祐の頭に合い、決勝ゴールが生まれた。そして、試合終了を告げるホイッスルがShonan BMWスタジアム平塚に鳴り響いた。

「最後に劇的なゴールが決まるんじゃないかと、曺(貴裁=監督)さんも話していたので、その通りになって勝てたのはプラスかなと思います」

 指揮官の言葉を信じ、90分間ピッチを走り回った齊藤未月は試合をそう振り返る。「良い形で(先に)2点を取って、その後、追いつかれてしまったことは反省しなければいけないけれど、そんなに悪いゲームプランではなかったんじゃないかな」と、90分の試合内容も満足いくものだったようだ。

 前半は両チームともにゴールの“枠”に当てるFKを放つ場面を作ったものの、それ以上のチャンスはなかったと言えるだろう。ただ、齊藤は「もちろん、得点を取ることができていればベストでしたけれど、相手がガツガツ来る感じもなかったし、僕たちはそんなにリスクを冒すわけではなくて、いつも通りプレーしていた感じです。0-0のまま進んでも、僕らには夏場の暑い中でも走り抜く体力があるし、最後に“一発”を持っている。だから、前半は良い形で終えられました」と振り返る。

 後半、チームとともに齊藤がギアを上げた。「今日は走り勝ったほうが勝つな、という感じはありました。何回飛び出して、何回戻れるか。その回数をより多く重ねられて、その強度を上げることができたチームが勝つと思っていたので、僕は意識的に(スプリントを)やりました」と、中盤の位置から上下動を繰り返した。相手が攻め込んでくれば後方へ下がり、ボールを奪えば一気に前方へスプリントする。後半立ち上がりの2ゴールは、齊藤だけでなくチームとしても狙い通りだった。

「練習していた形でした。(杉岡)大暉がパーフェクトなボールを入れましたし、得点を決めた2人(山﨑凌吾と野田隆之介)があのように泥臭く詰められたのも、湘南の良さだと思います。完璧な形の得点でした」(齊藤)

 その後、鹿島に2点を返されて同点に追いつかれたものの、「相手は引き分けでいいのか、勝ち点3を取るのか、そういった感じはあったので、僕らとしてはそこからもう1度パワーを持って、自分たちの流れに持ってくることができたと思います。交代選手を含め、もう1度前へ行けたんじゃないかな」と、再びアグレッシブな姿勢を見せた。

 そして、終了間際の勝ち越し点が生まれる。「最後も交代で入った梅さん(梅崎司)がコーナーキックを蹴って、それを坂(圭祐)くんが決めて、本当に良い形だったんじゃないかなと思います。今の立ち位置としても、僕らが真ん中より下(の12位)にいて、鹿島が上(3位)にいた中で、ホームでこのように勝てたことは自信になる。みんなで喜ぶことも、チームが上に行くために必要だと思う」と、齊藤は胸を張った。

 ただ、この劇的な勝利を今後につなげていくため、齊藤は2カ月前の教訓を思い返す。

「浦和戦(第12節・○3-2)は、あのように勝ったのに(2点を先行され、誤審でゴールを認められない場面もあったが逆転勝利)、その後(リーグ戦)5連敗を喫してしまった。みんなも分かっていることだと思いますが、この勝利で燃え尽きてしまうのではなくて、またすぐに試合があるので、もう1度闘志を燃やし、練習からさらにアグレッシブにやっていきたい」

 中盤で存在感を放つ20歳の若き闘将が、シーズン後半戦も湘南をけん引する。

取材◎小林康幸

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