12月28日、全国高校サッカー選手権が100回大会を迎える。首都圏開催となった55回大会(1976年度)から現地観戦・取材を続ける筆者が歴史を振り返り、節目の記念大会への期待を綴る。選手権はいつの時代も予想を超え、チームの、そして選手の100パーセント以上を引き出す舞台だ。

強い思いが好プレーを生む

画像: 63回大会の岩井厚裕の同点ゴール。鮮烈な印象を残す一発だった

63回大会の岩井厚裕の同点ゴール。鮮烈な印象を残す一発だった

 それから数10年、毎年会場に足を運び、途中からは取材者として試合を見つめてきた。そこで感じるのはこの舞台で選手たちが普段では発揮できないようなプレーもしばしば見せてくれることだ。

 第59回大会、小松晃(西目農)の50メートルシュート、第62回、国立に入りきれなかった大観衆の前で決めた前田治(帝京)のハーフボレーの決勝ゴール、第81回で国見の3連覇を阻んだ小川佳純(市船)の目の覚めるようなミドルシュート、第84回、5人が絡んで流れるような展開から決めた瀧川陽(野洲)の決勝ゴール、第92回、旧国立最後の舞台で北信越勢対決となった富山一と星稜の決勝、残り3分から2点差をひっくり返した富山一の大逆転劇……。

 挙げればきりがないが、最も印象深いのは第63回大会の決勝戦で九州勢として初めて決勝に進んだ島原商と前年度優勝校・帝京との一戦で生まれたシーンだ。島原商が押し込んで1点のリードを奪いながら、後半、帝京がペナルティーエリア外で得たFKをキャプテンの岩井厚裕が渾身の思いを込めて蹴り、それが島原商が作った壁のわずかな間を抜けてゴールインした。この同点弾で帝京は両校優勝に持ち込んだ。おそらくあと何百回蹴っても同じように決まることはないだろう、ゴール。そんなシーンが生まれるのが、高校選手権という大会だ。

 もちろん日頃からの厳しい鍛錬があってのことだが、高校生たちの強い思いが好プレーを呼び、予想を超えた結果をもたらす。昨年度も山梨学院がキャプテンのGK熊倉匠の強いリーダーシップに導かれて、個性的な選手たちが持ち味を発揮して絶対的本命だった青森山田を決勝戦で破った。

 一昨年も静学が前述の第55回大会で見せたサッカーを貫きながら進化させて、逆転勝利で初の単独優勝を果たした。2年連続で決勝で涙を呑んだ青森山田は今回こそはと例年にも増して強い思いを胸に第100回大会に臨んでくる。

 毎回選手権に向けて情報を集めて整理している。最近では予選決勝の全試合がCS放送や動画などで見ることができ、実際に映像で確認して、このチームは強い、こっちのチームも面白い、この選手はすごい、この選手も実際に見てみたいと、想像を大きく膨らませてスタジアムへ向かう。毎度期待通りとはいかないものの、それ以上に新しい発見もある。実際に観戦すればまた次の試合が楽しみになる。

 首都圏に移って45回目、自分にとっても45回目となる100回大会。今大会も楽しみは尽きない。

著者プロフィール/くによし・よしひろ◎1954年11月2日生まれ、東京出身。1983年からサッカーマガジン編集部に所属し、サッカー取材歴は38年に及ぶ。現在はフリーランスとして活躍中。日本サッカー殿堂の選考委員も務める。


This article is a sponsored article by
''.