AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)でついに決勝へと駒を進めた川崎フロンターレ。見事な采配で王手をかけたのが長谷部茂利監督だ。今季、就任して4カ月と少し。勝負師としての信念と選手への分厚い信頼で、必ずアジアの頂点に立つ。

上写真=長谷部茂利監督は常に冷静に論理的に選手とチームを表現する(写真◎J.LEAGUE)

「すごいな、よくやったな」

 見事な采配に喝采がやまない。

 延長戦まで120分も戦った準々決勝のあと、中2日という過酷な日程で迎えた準決勝のアル・ナスル戦、長谷部茂利監督はFW神田奏真とMF大関友翔という若手を先発に抜擢した。U-20日本代表のメンバーでアジアでの戦いの経験はあるが、かたやプロ初先発、かたやJ1でも1試合にしか先発していない。

 タスクはこうだ。前半45分限定。守備では相手のキーマンに指名したボランチのマルセロ・ブロゾビッチを封じ込めること、攻撃では彼らならではのアイディアを加えること。

 そして、彼らは見事に完遂した。ブロゾビッチを2人で挟み込み、神田は最前線でボールを動かして相手を走らせ、大関は先制ゴールに絡み、2点目を自ら決める活躍だった。

 最終的に3-2の勝利へと導く中で、この起用が大きな流れを作り出したことは間違いない。そこには、長谷部監督の勝負師としての信念がはっきりと映し出されていた。

「正しい判断をしたいというのが自分の根底にあります」

 今年就任した長谷部監督は選手をつぶさに観察し、神田と大関の守備力が高いことを評価していた。プロの公式戦にほとんど出場していなくて、まだ体の線も細い若いアタッカーの守備力?

「彼ら2人の守備力というのは非常に高いです。自分たちでボールを取れなくても、次の選手、後ろの選手に取らせることを含めて守備力があります。ただの走力ではなくて、そこを評価しています」

 対人で体をぶつけてボールを絡め取るような、例えば橘田健人のようなものとは異なる力が彼らにあること。それがこの試合には極めて有効になること。どちらにおいても「正しい判断」を下して、そして勝った。

 その「正しさ」の一方で、次が決勝戦であることの特別感もある。

「これまで通り正しい判断をしていかなくてはならないですが、これまでも取材の場でも決勝戦は別だという話をしてるんですね。だから、やれるところまでやってもらいたいというのが監督の気持ちですね。ただ、選手は相当きついと思います」

 選手たちももちろん望むところだろう。ファイナルの舞台では「正しい判断」と「決勝戦だからこその判断」の両方を下すことになるが、その青写真を描くのに、思考の順序のようなものがあると明かす。

「そもそも自分たちの選手が躍動することが大事なので、それがどんどん頭に入っているし、練習もいろいろ作りながら引き出しを増やしてきているつもりなんですね。そして、その中から何をどうしようか、一番いいものを当てたいということです」

「自分たちがスタイルを出せるかどうか。出せなくても、昨日(準決勝)のように攻撃がたくさんできるように。そういうゲームに持っていけなかったとしても、試合を勝ちに持ってくにはどうしたらいいか」

「そういうことも含めて、自分たちがどうにかするというところに持っていきたい。それをこの1日、2日で決断していきます」

 その道筋をていねいに進み、表現することで、アジアの王者になる。

「決勝戦は、字の通り決するところですね。1位と2位は大きく違うと思います。2位になれたから良かったね、と言ってくれる人もいますけれども、やっぱりタイトルを取ると取らないとでは大きな違い。そこは選手にもスタッフにも認識してもらいたいし、私はそういうふうに考えています」

 長谷部監督は準決勝を勝ちきったあと、改めて選手たちにリスペクトの思いを抱いた。

「ベスト4に入ったときはほっとしましたけど、どちらかというと、今回はそのほっとしたを超えて、なんですかね…うれしい度合いが強いというか、みんなよくやったなっていう、そういう選手への労いっていうんですかね。いや、すごいな、よくやったな、っていう、そういう思いです」

 そんな彼らとともに、必ずアジアの頂点に立つ。


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