日本代表は15日、オーストラリア代表とのアジア最終予選に臨む(@埼玉スタジアム2002/19時35分開始)。トニー・ポポヴィッチ監督就任後、前節の中国戦しか戦っていないが、すでにいくつかの変化が見られる。ここでは新生オーストラリア代表がどんなチームなのかをリポートする。

上写真=前節、オーストラリア代表はホームで中国に3−1の勝利を飾った(写真◎Getty Images)

前体制でチャンスの少なかった選手を抜擢

 オーストラリア代表というと、必ず思い出すのはカタールワールドカップのグループステージ最終節だ。デンマーク代表に1-0で勝利し、決勝トーナメント進出を果たした直後にもかかわらず、ミックスゾーンに集まったオーストラリア人記者たちに笑顔は少なかった。

 漏れ伝わってくるのは「次の4年間もアーニーか……」というため息混じりの声。選手たちは歓喜の表情だったが、記者たちはベスト16入りという結果を残したことでグレアム・アーノルド監督の続投が濃厚になったのを残念がっていたのである。

 あれから約2年。結局、アーノルド監督は道半ばでオーストラリア代表から去ることとなった。今年9月に始まった北中米ワールドカップアジア最終予選の初戦と第2戦で1分1敗とつまずき、同月20日に突如辞任を表明したのである。オーストラリア代表史上最長の約6年に及んだ長期政権は、あっけなく幕を閉じた。

 後任に指名されたのは今夏までメルボルン・ビクトリーを率いていたトニー・ポポヴィッチだ。現役時代にサンフレッチェ広島で活躍し、日本代表の森保一監督や下田崇GKコーチとチームメイトでもあった新指揮官の就任は、現状考えうる唯一にして最良の選択肢だったと言えよう。

 オーストラリア代表選手としてワールドカップ出場歴を持ち、イングランド・プレミアリーグで活躍した経験もある。監督としてはウェスタンシドニー・ワンダラーズ時代の2014年にオーストラリア勢として初のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を果たし、現在まで唯一のオーストラリア人ACL優勝監督であり続けている。

 しかも、契約満了となる今夏までメルボルン・ビクトリーで監督を務めていたため国内の選手に精通し、現場感覚も鋭いまま。国外で働くアンジェ・ポステコグルーやケヴィン・マスカットの招へいは現実的ではなく、それ以外の選択肢の中でポポヴィッチは実績も経験もともにトップクラスだった。

 次の試合まで約3週間と準備期間は限られていたが、新体制の初陣となった10月10日の中国戦は3-1で勝利を収めている。ポポヴィッチはその試合の前日会見で「非常にダイナミックに戦う」と宣言し、それ以前から予告していたチーム改革の一端をしっかりと表現して見せた。

 アーノルド体制からの最も大きな変化はシステムだ。これまで基本的に4-4-2で戦っていたオーストラリア代表は、中国戦で3-4-2-1を採用。シンプルな速攻主体の戦術をハイプレスやポゼッション重視に変えた。

 選手の選考や起用法にも変化をつけた。ポポヴィッチ監督は経験豊富な選手でもチームから外すことを躊躇せず、自身がメルボルン・ビクトリー時代に指導していた選手やアーノルド体制でチャンスの少なかった選手にスポットライトを当てて競争を促している。

 例えば2018年から2020年にかけてジェフユナイテッド千葉でプレーし、現在はメルボルン・ビクトリーに所属するジェイソン・ゲリアは約8年ぶりの代表復帰。また、長く不動の守護神として君臨しチームキャプテンでもあるGKマシュー・ライアンを先発から外し、若いジョー・ガウチにゴールマウスを託した。継続的に招集されながらほとんど起用されていなかったトーマス・デンも、中国戦で3バックの一角として先発に抜てきした。

 起用法で言えば、クレイグ・グッドウィンの役割変更もチームに好影響をもたらしている。これまで左サイド起用がほとんどで、中央のFWに向けてひたすらクロスを上げさせられていたレフティーを中国戦で右シャドーに配置。よりゴールに直結するプレーを出しやすくなったのか、グッドウィンは中国戦で1得点1アシストと躍動した。鋭く曲げて落とすフリーキックで同点弾を演出し、左足から繰り出す強烈なミドルシュートで逆転ゴール。日本代表に対しても大きな脅威になるのは間違いない。

 右ウイングバックで先発起用したルイス・ミラーには汚名返上のチャンスを与えた。今年1月のAFCアジアカップ準々決勝の韓国戦で2つのファウルが敗退に直結してしまい、3月以降の代表戦で完全に干されていた24歳のDFは、ポポヴィッチ監督の期待に応えて1得点。驚異的なスピードで右サイドを駆け上がり、身長187センチの高さを生かした空中戦でも存在感を発揮していた。


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